第38回 変わる意識の中で成長中。注目の中国マタニティコスメ

【週刊粧業2022年10月24日8面にて掲載】

 中国の出生数は減少傾向にあるがそれでも年間約1000万人。出産する母親たちも、社会の変化に伴いその思考が大きく変化しており、新たな市場を形成しつつある。今回は100億元市場ともいわれるマタニティコスメ市場をクチコミから見ていこう。

 中国では「出産」に対するこだわりが強い。

 「適齢期になったら結婚」「結婚したら子供」という伝統的な意識が強いお国柄ではあるのだが、出産に関しては非常に多くの注意事項があった。

 例えば、結婚し第一子を考えている夫婦は、その時点から飲食に気を使い始める。

 特に女性はより健康な子供を産むために「色のついた飲み物」や「カフェイン」を絶ち、不純物を摂取しないように心がける。

 もちろん肌につける化粧品にまで気を使い、特に色素などを含んだカラーメイク、時にはスキンケアまでを控える傾向があった。

 数年前まで「計画生育(一人っ子政策)」という政策が行われていた背景もあるかもしれない。

 しかし、そうした傾向にも変化が訪れている。

 いわゆる80年代後半から90年代生まれという新世代が母親になる中で、「美しさを保った妊婦さんに」という意識が強まっている。

 そこで注目されているのがマタニティコスメという領域である。

 トレンドExpressではその消費者意識を知るため、妊娠期におけるコスメに関するクチコミについてウェイボーの簡易分析を行った。

 まず「孕期化妆(妊娠期コスメ)」というクチコミでは、年間で2万2000件余りの投稿が見られた。

 「孕期×护肤(妊娠期×スキンケア)」「孕期×彩妆(妊娠期×メイクアップ)」という複合条件においては前者で2万9800件、後者では6400件程度と、よりスキンケアに関するクチコミが多い様子が見て取れた。

 「妊娠期コスメ」や「スキンケア」において共通するキーワードとして「無添加」というものが上がっている。

 妊婦さんのコスメが“解禁”されつつあるとはいえ、何でもよいわけではなく、胎児に影響を与えない無添加化粧品のニーズが高まっていると考えられる。

 そうしたクチコミの中で注目したいのが「植物主義(PLANT‘ISM)」というブランドである。

 化学成分ではなく、植物、漢方由来の原材料を用いたスキンケア、メークアップ商品で、主に妊婦さんをターゲットに展開している中国ブランドだ。体験共有SNS・小紅書(RED)においても、妊娠期の安心商品として紹介されている投稿が多く存在し、妊婦層に浸透し始めている。

 「魚子(魚卵)」というキーワードも興味深い。

 一部では「魚卵エキス」や「魚卵プラセンタ」といったヒアルロン酸、コラーゲン、ビタミンを多く含み、かつ胎児に影響がない成分の化粧品も「妊婦さんでも使用可」といったフレーズで売り出している。

 「妊娠期コスメ」に関するクチコミの中には「夫」や「姑(夫の母)」といったキーワードがみられる。女性の妊娠期のコスメに関しては、周囲の人がそれぞれの考え方を持っており、いろいろなアドバイスをしていることが予想できる。時には「嫁・姑の争い」に発展するということも耳にする。

 時代の変化によって、「妊娠期もキレイな姿でいたい」とコスメを求める中国の女性が増加中だ。

 ただし、妊婦さんが安心してコスメを楽しむには、妊婦さんだけでなく、その周辺の存在に対する訴求、啓蒙活動も必要となりそうだ。
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森下 智史

株式会社NOVARCA 「中国トレンドExpress」編集長

高校卒業後、約10か月間日本で中国語を学ぶ。1998年2月~上海で学部および大学院(中国古代史)で学ぶ。 2005年に卒業後、上海で在留邦人向け情報誌の編集・ライターとして業務。 2012年に日系市場調査会社上海現地法人でマーケティングリサーチ(産業調査)業務に携わる。 2015年5月、17年間の中国生活に区切りをつけ、帰国。東京で日中間のビジネスコンサルティング業務を経て2018年1月にトレンドExpress(現在はNOVARCA)入社。現在に至る。

https://www.novarca.jp/

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