第40回 苛烈な競争が続く中国美容液市場

【週刊粧業2023年5月1日8面にて掲載】

 2023年第1四半期の数字からも回復がみられる中国消費経済。化粧品業界も活気とともに苛烈な市場競争が戻ってきた。今回はその中で注目の「美容液」市場を分析してみよう。

 中国におけるEC売上ツール「魔鏡データ」によると、中国EC最大手の天猫(TーMall)の22年美容液類の販売総額はおよそ234億元となった。

 前年比で10.5%ほどの伸びを見せている。またコロナ前に当たる19年には143億元余りであったことを踏まえると、60%以上も伸長したことになる。

 さらに驚くべきは「単価」である。

 単純計算になるが、19年時には販売額に対する販売個数で見る単価が200元未満であったのが、22年には335元となり、高級化が大きく進んでいる。

 ブランド別のランキングを見てみると、成長目覚ましいのは中国ブランドの「PROYA」で、22年は「Estee Lauder」「Olay」を抜いて1位を獲得した。売上金額は前年比112.2%と伸ばしている。

 しかし、そのPROYAも、天猫の美容液類市場では8%を占めているに過ぎず、上位10ブランド合算でも全体の半数に届かない。過当競争の市場であることが見て取れる。

 こうした美容液市場の消費者ニーズを知るため、NOVARCAでは美容液に関するWeiboクチコミ簡易調査を行った。期間は直近1年間(22年4月~23年3月)である。

 美容液のクチコミ件数は月平均で8000件を超えており、1年通算で100万件近い投稿がなされている。

 そのクチコミの中身を詳しく見てみよう。

 上位に上がっているブランド名は「PROYA」だ。

 その人気商品名である「紅宝石(ルビー)」とともに上位に上がっており、前述の22年天猫売上1位となっている人気ぶりをここでも確認することができる。

 気になるのは「WINONA」だ。中国国産敏感肌スキンケアとしての認知を得ている同ブランドも美容液市場に参入し、その動向が注目されている。

 それ以外では、主に効果効能、成分に関するクチコミが圧倒的に多い。「補水」や「保湿」はもちろんながら、「アンチエイジング」効果、「シワ」や「肌の引き締め」などのワードが姿を見せる。

 中国消費者はこうした効果を確認した上でどのブランドの美容液がよいかを選んでいる傾向が見て取れる。

 特に「アンチエイジング」へのニーズは高い。「Estee Lauder」や「SkinCeuticals」といった人気美容液のクチコミでも「アンチエイジング」が上位に位置し、美容液選択の非常に重要な効果となっていること、また、人気ブランド側もそうした効果を積極的に訴求していることが分かる。

 さらに、高級美容液市場においても「成分党」の影響が強くなっているようで「ナイアシンアミド」「ヒアルロン酸」などへの関心の高さがうかがえる。

 4月18日に発表された社会消費品小売総額において、化粧品類は3月単月で393億元(昨年同期比9.6%増)、第1四半期でも1043億元と、昨年同期比5.9%増の伸びを見せた。

 コロナによる影響を脱し、徐々に正常に戻りつつある。

 その中で美容液市場の競争もより激しくなる。アンチエイジング成分の効果を気にする消費者に、しっかりと自社ならではの特徴を訴求することがますます重要になってくるだろう。
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森下 智史

株式会社NOVARCA 「中国トレンドExpress」編集長

高校卒業後、約10か月間日本で中国語を学ぶ。1998年2月~上海で学部および大学院(中国古代史)で学ぶ。 2005年に卒業後、上海で在留邦人向け情報誌の編集・ライターとして業務。 2012年に日系市場調査会社上海現地法人でマーケティングリサーチ(産業調査)業務に携わる。 2015年5月、17年間の中国生活に区切りをつけ、帰国。東京で日中間のビジネスコンサルティング業務を経て2018年1月にトレンドExpress(現在はNOVARCA)入社。現在に至る。

https://www.novarca.jp/

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