【週刊粧業2023年6月5日号8面にて掲載】
私たち女性は青春時代から「お肌のお手入れ」について何の疑問を持たずにやってきたと思う。それは「ボーッと生きている」ことになるのではないかと反省し、改めて「私たちはなぜ毎日お肌のお手入れをするのか?」を考えてみた。もちろんスキンケアだけでなくメイクも含めたお手入れのことだ。ノンメイク派からは「メイクはお手入れとは言わない」と言われるだろうが、広く捉えてもらいたい。
まず私に限って言えば、お手入れは「身だしなみ」「毎日の習慣だから」が正直な答えだ。若い時は「少しでもきれいになりたい」という欲望もあったが、長年お手入れをしてきた割には、あまり代わり映えしない気もする。習慣化しているため段取りの手際は良くなったと思う。使う商品、使う量、使い方も決まっており、メイクの失敗は少なくなった。
今や毎日の習慣になっており欠かすことはできない。お手入れをさぼった日や手抜きをした日はなんとなく後ろめたいし、お手入れが不足しているとその日一日のモチベーションが上がらない気がする。
そんなことを考えていたら、順天堂大学医学部教授で自律神経研究の第一人者、小林弘幸氏の「整える習慣」という本を見つけた。先生の教えによれば、「毎日小さなストレスによるダメージを回避して、心地よく、気分良く、面白いと感じる瞬間を多く作り出していくと、希望を持ってイキイキと生きる状態が生み出される。そうすると自分が持っている能力や実力を最大限に発揮することができる」らしい。そんな「ストレスの無い心地よい日々を過ごす」ためのノウハウが紹介されている。「窮屈な服や靴は選ばない」「シャツは白一択」というのもある。
毎日のお手入れもこれにあてはめて「整える習慣」と考えれば、取り組み姿勢も変わってくるかもしれない。自分にとってストレスのない心地よいお手入れを考えてみた。まずお手入れの環境だ。曇りがなくよく映る大きな鏡、肌の状態が良く見えるような照明、肌ざわりが心地よいタオルやヘアバンド、化粧品は開けやすく使いやすい容器、中身を出しやすいことが必須の条件だ。
迷わず適量が出せることも不可欠、そして手に取りやすくこぼれない中身(バルク)、その瞬間に好みの香りがほのかに漂う、肌に乗せるとしっとりとしてベタベタしない。時間が経過してもしっとり感が維持されてお肌がプルプル。メイクにも不都合はなく、ファンデーションもポイントメイクも楽に塗れる。その上、クレンジングや洗顔はするっと落ちる。
翌朝もふっくら感を充分に実感する。こんなお手入れの時間を過ごすことが出来たら、気分の良い毎日を過ごすことができて、少なくともお手入れのストレスはなくなりそうだ。
化粧品とそのお手入れで、心を整え、自律神経が安定して穏やかな日々を過ごすことができれば、メンタルの不調や体調へのダメージを少なくすることができるのでないか? そう考えると、化粧品は「自分を整える」ためにとても大きな役割を果たす。
お手入れは「ベストコンディションの私を取り戻すための儀式」になるので、目的が明確になってくる。そうなれば化粧品も自分にとって無くてはならない「ルーティン商品」になる。商品を購入すると同時に、この心地よいお手入れ方法も手に入れることかできれば、お手入れの時間は「私を整えるルーティン」になり、化粧品はお気に入りの「マイ・ブランド」になる。やはり化粧品は「お手入れ方法の提案」を付加して販売するべきだと思う。