アルビオンは、昨年1月に新ブランド「レ・メルヴェイユーズ ラデュレ」(以下、ラデュレ)を立ち上げ、チークで市場に新風を巻き起こした。
今年は5月にボディケア、秋にスキンケアを導入し、さらなる商品ラインナップの拡充を進めていく。
小林勇介取締役国際事業本部長は、メイクアップからスキンケア、ボディケアまで幅広く展開できる数少ないブランドであることから、「アルビオンの国際事業を牽引する基盤ブランドになり得る」とラデュレの将来性に太鼓判を押す。
ブランドの立ち上げ経緯や国内外での展開方針、中長期展望などについて話を伺った。
使い方が難しいため敬遠されてきた
チークに着目し、未開分野を開拓
——「レ・メルヴェイユーズ ラデュレ」を立ち上げるに至った経緯についてお聞かせ下さい。
小林 アルビオンは、「アナ スイ」「ソニア リキエル」「ポール&ジョー」といったブランドのライセンスを取得してきましたので、次なるブランドの展開を模索していました。しかし、元々のブランド力があっても、化粧品としてのユニークさが表現できなければ、我々としては扱う意義がないと常々考えていました。
そうした中、フランスで「ラデュレ」と出会いました。ラデュレは歴史と伝統があり、代表的な商品「マカロン」の色鮮やかさも含めて化粧品において様々な商品のアイデアが一瞬にして思い浮かびましたので、これは面白いブランドになるだろうと直感しました。
ファッションブランドやアーティストブランドといった切り口ではなく、パティスリーブランドであることも新鮮でしたので、早速コンタクトを取ると、先方もちょうど化粧品での展開を模索していたということでした。
これまでにない化粧品を展開していきたいというラデュレ社の想いが、我々の考えとも一致していたことから契約はスムーズに進みました。ただ、ユニークな製品を提供していくことには両社とも強いこだわりがありましたので、契約からデビューまでに約3年の月日が掛かりました。
特に、薔薇の花びらのチーク「フェイス カラー ローズ ラデュレ」の開発においては困難を極め、かなりの時間を要しました。苦労の甲斐もあり、ブランドを象徴する商品がデビュー時に紹介できて良かったと思います。
——あえて、未開拓分野であるチークにフォーカスした理由は。
小林 やはり、この世にないもの、他のブランドにない特徴を打ち出していくためには、大きい市場を狙うより、小さな市場を開拓していくのが当社らしさであると思いました。アナ スイがデビューした時もネイルの分野を開拓していったように、ラデュレではチークのカテゴリーを開拓していこうと考えました。
チークは非常に奥深く、女性をキレイに魅せることができる半面、使い方の難しい商品です。事前にアンケート調査をしたところ、「興味はあるが使い切れていない」という声が圧倒的に多かったのがこのカテゴリーでした。
我々はこの部分に着目し、気軽にチークを使ってキレイになれる提案をしていくことができれば、ブランドとして大きく成長できると考えました。
ラデュレというブランド自体、150年もの歴史があり、その当時のフランス絵画には、貴婦人が真っ白な肌にチークをつけている様子が描き出されています。フランスらしさや高級感を出すという意味においても、チークにフォーカスして良かったと思います。
「認知度」「香り」「世界観」の
3要素がラデュレを成功に導く
——世にないものを創り出すという開発プロセスで学んだ様々なことを、今後の商品づくりにどう活かしていきますか。
小林 この商品が世に送り出されることで、多くの方々に喜んでもらえるのか、感動してもらえるのか、直前まで何度も議論を繰り返しました。
ブランドを長年展開していると、どうしてもルーチンに陥りがちになりますが、パッと見た瞬間の感動が何より大切です。ラデュレのデビュー時のように多くの女性たちに感動を与え、人々の気分を高められるような商品を、他のブランドでももっと開発していかなければならないと思います。
——ラデュレがここまで成功した要因をどう捉えていますか。
小林 パティスリーのラデュレは、フランス本国でも行列ができるブランドで認知度も高いです。日本では7店舗と少ないですが、独特の雰囲気を醸し出しています。パティスリーの店舗がない都市での認知度アップが不可欠であり、それをクリアしていくことでさらなるブランド力の強化につながると考えています。
一方、香りも大きな要因と考えられます。ラデュレ社から強い要望があり、何回も議論を重ねた末、少し強めのローズの香りを採用しましたが、これが非常に好評です。メイクやボディケアで香りを楽しむ傾向はますます強くなっています。
さらに、ブランドの世界観も成功要因の一つと考えています。デビュー前に開催されたプレスイベントでテーブルに並べられた製品の色味・パッケージ・世界観を見て感動している女性たちの姿を目撃し、「これならいける」と確信しました。
このように、「認知度」「香り」「世界観」という3要素が相俟って、成功を引き寄せることができたと思います。
——5月29日にはボディケアアイテムを投入しました。
小林 現在、「フェイス カラー ローズ ラデュレ」がブランドを象徴する商品ですが、個人的な目標として年に1個はこうした世にない象徴的なものを出していければ面白いと思っています。
今後については、香りを気軽に楽しむことができるラデュレの導入商品として、ボディケアが非常に重要だと考えています。まずは、ボディミルクとソープに5種類の香りを揃えましたが、今後もラインナップを拡充していきます。
また、癒しやナチュラルのイメージが連想しやすいラデュレのブランド特性からスキンケアも有望ですので、秋口にはスキンケアを導入する方針です。
さらに、ラデュレが創業された当時、頬紅と口紅が貴婦人の間で代表的な商品であった点も踏まえ、口紅についても使いやすいものを出していく計画です。メイクやボディケア、スキンケアで象徴的なアイテムを展開していければ、非常に面白いブランドになるだろうと思います。
——チークという強みを伸ばしつつ、全体的な広がりを持たせるというのは至難なことです。
小林 チークについては、使いやすく、面白い商品が増えていくと思います。その他の商品群についても、気軽に楽しんでもらえるアイテムを充実させるなどして、選択肢を増やし、選ぶ楽しみを提供していきたいと思います。季節ごとの提案など、うまくバランスを取りながらカテゴリー、ラインナップを充実していきます。
今後は、ブランドを象徴するような「柱」となる商品をもっとつくっていかなければいけませんし、1つだけでは弱いと思います。柱が幾つかあって、その中で新しさを常に打ち出していきながら、ブランドを展開していくことが重要です。
様々な人が集まるサロンがルーツ
原点を体現するショップづくり
——様々なカテゴリーに拡げることができるとお考えになる理由を教えてください。
小林 ファッションブランドやアーティストブランドだとどうしてもメイク寄りになります。しかし、パティスリーブランドであり、サロンをルーツにしているラデュレは、若い方やご年配の方、ファッション好きな方など様々な人々が集まるイメージがまさにぴったりで、コスメコーナーを社交場と位置づけることで、様々な人々が集まれるような環境をつくっていけるのではないかと思います。
8月23日には、10店舗目となるショップをラフォーレ原宿にオープンします。サロン的な要素を取り入れ、自由に入って、楽しんでもらえるようなイメージで店舗を設計しました。休憩スペースでゆっくりくつろいでいただきながら、ブランドのルーツや原点を知ってもらうことも大変重要だと考えています。
——パティスリーとのコラボレーションについてはいかがですか。
小林 今後、パティスリーとの同時展開なども積極的に行っていきたいですし、ラデュレ社とも相談しながら提案していきたいと思っています。
地方都市では、化粧品の展開が先という地域もありますので、ブランドの知名度を高めていくことを一緒にしていければと思っています。
——国内における店舗展開についてお聞かせください。
小林 百貨店ルートでは現在、6店舗を展開していますが、ブランド全般を扱う店舗は10店舗ぐらいが理想的であり、最大でも15店舗程度に抑える必要があると思います。今後は、1店1店の中でベスト5を狙っていけるようなブランドにしていくつもりです。
ただ、ボディケアラインが充実してきた段階で、ボディケアのみを扱うような特別な店舗については、もっと増やしていってもいいと思います。
——海外展開はどのように進めていきますか。
小林 海外には、積極的に展開していきたいと思っています。秋口にはフランスでデビューする予定です。来年以降は、アジアでも展開していこうと考えています。
ラデュレ社も来年以降、香港や台湾、韓国、シンガポールに展開していく方針ですので、当社もそれに合わせて香港や台湾、韓国などに展開していこうと思います。さらに、フランスやロンドンをはじめ、ラデュレの知名度が高い欧米地域での展開も視野に入れています。
ラデュレは、今まで展開してきたライセンスブランドとは違う面白さを持っていますので、欧米開拓の重要商材として展開していきます。
将来的には「化粧品=ラデュレ」と
イメージしてもらえるブランドに
——中長期展望をお聞かせください。
小林 ラデュレ社と我々の思いが揺るぎなく固いということもあり、今後、ラデュレの世界観は必ず、日本のみならず、世界でも受け入れられると思っています。
ラデュレの強みは、ポイントメイクやベースメイクにとどまらず、ボディケア、スキンケアまで幅広い分野においてイメージがしやすいところだと思います。つまり、どのカテゴリーも伸ばしていけるブランドであり、世界各国でこのテイストというのは好まれるのではないかと思っています。
またラデュレは、サロン的な雰囲気の中で気軽に様々なものを試し、気に入ったものを購入してもらうことができるブランドですので、「化粧品=ラデュレ」とイメージしてもらえるようなブランドにしたいと思います。
1ブランドで幅広い分野をカバーする高級化粧品ブランドは今のところ見当たりません。だからこそ、挑戦し甲斐があります。ポイントメイクやベースメイク、ボディケア、スキンケアまでカバーできる数少ないブランドですので、世界中の導入店で、いずれもトップ5に入っていける実力は十分あるはずです。
こうしたことからも、ラデュレは、10年先を見据えた時に、アルビオンの国際事業を牽引する基盤ブランドになり得ると確信しています。
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