社員が誇れる企業
地域から愛される企業を目指して
――その新工場として佐賀工場が昨年4月に竣工しました。19年から国内インバウンドの減速感が進み、着工当初の計画とは異なる状況かと思います。
岩瀬 当初の見通しは、既存工場の負荷軽減を図るとともに、イン&アウトバウンド消費が拡大していく最中、東京五輪が20年夏に予定どおりに開催されてピークを迎え、国内供給量の増大に対応していくことで、佐賀工場の生産拡大を図っていくというものだった。
当初計画とは異なるが、今年に入って世界規模でコロナ感染拡大の影響で製造業が厳しい状況を迎えている。
そうなる前に、新工場スタッフの研修を半年間かけて行い、1年前に稼働してきたことは、今、こうした状況を迎えて結果的に良かったと思えている。
そもそも、佐賀工場の建設は震災で宇都宮工場が被災したことを受けてすぐに計画をスタートした。
当時は、設備関連業者のおかげで、第二工場が約1カ月、第一工場が約2カ月という早期に復旧することができたが、それでも復旧期間中、上野工場の稼働率は通常時の200%という状況が続き、西日本エリアに候補地を探し始めた。
佐賀工場は、「み(魅)せる工場」をテーマに、ガラス張りで見学者通路を設けたオープンで明るい雰囲気を重視した。
取引先や仕入業者はもとより、地域の方々にも当社がどのような会社であるかを知ってもらえるよう、オープンな工場を目指した。
工場内は小中学校の課外学習の受け入れや、夏休みの宿題などに活かせる化粧品づくりのイベントも計画している。
一方で、社員が「通いたくなる工場、働いていて楽しい工場」という副テーマを持って、設計した。
工場内には、創業期から現在までの当社の歴史を辿ることができるミュージアムや、ボルダリングや卓球、ビリヤードなどを設置した休憩スペースも設けている。
また、ミュージアムや見学通路には、化粧品ができるまでの流れや、当社が関わってきている商品を展示している。
自分たちが携わっている化粧品がどのような流れで作られ、生活者のもとに届いているのかを理解してもらうことは重要だと考えている。
映し出される情報を見て、自分たちがその製品を作っているという意識を持ち、仕事のモチベーションにしてもらいたい。
その一環で、佐賀工場では、社員の家族を招待し、実際に働いている様子を見学してもらう機会を設けている。
ODM/OEMという特性上、一般の方に当社のことを知ってもらう機会は少ない。家族の働いている環境やその仕事内容を見て、安心してもらうとともに、社員自身にも当社の社員としての自信や誇りを持ってもらいたい。
また、直近では、社員たちにとって大きな励みにもなった取り組み事例ができた。普段は表舞台に立つことがない当社だが、コロナ感染拡大を受け、同業者をはじめ容器・パッケージ会社の8社と協力し、感染対策の支援活動に取り組んだ。
――自治体などにアルコール配合製品を無償配布された支援活動のことですね。
岩瀬 化粧品の開発・製造に携わる企業として、何かできることがないかと考えていた。
日頃より、化粧品業界は他業界に比べ、同業者同士の仲が良い業界だと感じていた。仲が良いからこそ、競い合い、困った時には助け合える。
そうした横の関係性が業界の発展に貢献している部分も大きいと感じている。今回の事業は、それを象徴するような取り組みだった。
当社ではアルコール配合製品「ハンドクリーンローション」をつくり、まず社員とその家族から、続いて事業所や工場のある自治体や医療・介護・教育施設などに計15万本以上を無償提供させていただいた。
配布先はもとより、自治体を通じて配布された様々な施設から、各事業所には感謝状や手紙が届いている。
工場で働く社員の皆さんからも、携わった製品が多くの生活者に喜んでもらえたことを実感するとともに、日々携わっている製品もまた、たくさんの生活者の役に立っていることに改めて気づき、仕事の励みになったとの声もあり、とても嬉しい出来事であった。
1つひとつの製品に想いを込めて送り出し、笑顔溢れる未来を、全社員一丸となって創っていきたい。