2015年8月4日 15時00分
花王株式会社(社長・澤田道隆)ヘアケア研究所は、日本人女性の美しく健康的な髪質について、さまざまな視点から調査・研究を行なっています。
今回、日本人女性の髪の「しなやかな髪質」に着目し、「しなやかな動きのある美しさ」の要因を、これまで積み重ねてきた調査・研究知見をベースとして科学的視点から詳細に解析した結果、「毛髪表層は柔軟で毛髪内部は弾力がある二層状態の物理的性質を持つこと」がその一つであることを解明しました。
なお、今回の研究知見は、平成27年度繊維学会秋季研究発表会(2015年10月22~23日)で発表する予定です。
花王では1975年以降、約40年にわたり、10代~60代の日本人女性の髪質実態調査*1 を実施しております。その中から、日本人女性の美しく健康的な髪の特徴の一つである「しなやかな髪質」に着目しました。
この髪質を先天的に保有する方とそうでない方のうち、特徴的な10人の毛髪を用いて、その内部構造を詳細に解析しました。その結果、蛍光染料による染め分け技術を駆使することで、「しなやかな髪質」の毛髪においては、表層付近にオルト構造を持つコルテックス細胞(繊維がスパイラルにねじれて並んだ細胞)*2 、内部にパラ構造を持つコルテックス細胞(繊維が平行に並んだ細胞)*2 が多く配された二層構造である特徴を見出しました。(図1)
先天的に「しなやかな髪質」の方の毛髪は、コルテックス細胞の構造の分布に偏り(二層構造)があることから、毛髪の表層と内部で物理的性質の違いがあり、このことが「しなやかな髪質」の要因ではないかと考えました。
そこで、後天的な変化(化学処理などのダメージ)がある一般的な実態毛まで範囲を広げて、「しなやかな髪質」の方と「しなやかでない髪質」の方のうち、特徴的な50人の毛髪を抽出して、その物理的性質の詳細な解析を進めました。その結果、『「しなやかな髪質」は、「表層は柔軟で内部は弾力がある二層状態」という物理的性質を持つこと』を解明しました。(※代表的な例を、図2に示します)
花王は、美しく健康的な髪質について、40年以上の長きにわたり、のべ10万人以上の女性を対象とした髪質実態調査を通して、髪質の要因を解き明かす調査・研究に注力し、毛髪科学の研究と新しい技術の開発を積み重ねてきました。これまでに培ってきた長年の毛髪科学の研究の知見をベースとして、「しなやかな動きのある美しい髪」の要因を探り、日本人女性の毛髪の微細な内部構造及び物理的性質を広く詳細に解析し、今回の研究に至りました。
髪質は遺伝などにより人それぞれで異なり、さらに同じ人でも、毎日の洗髪・ヘアケア行動などの外的ストレスや、ホルモン・加齢変化などの内的ストレスによって変化します。今回得られた研究知見により、ひろくさまざまな性質の髪が、表層は柔軟で内部は弾力がある二層状態にすることで、「しなやかな動きのある美しい髪」に向かうという方向性が示されました。それを実現する一つの方法として、特定の有機酸を特定の条件で作用させることが有効であることも見出しております。
花王では、加齢にともなう髪質の変化も重要な研究テーマの一つであり、今後もヒト(意識・行動・髪質実態)と物質(健康で美しい髪質を保つ技術)の大きく二つの側面からの研究知見を深化・融合させて、髪質の本質を追究する研究に注力するとともに、元の髪質によらず、誰もが理想の髪質を実感できるための技術についても研究知見を積み重ねていきます。
図1 先天的に「しなやかな髪質」に特徴的な毛髪の内部構造
*1 髪質実態調査
研究員(美容師を含む)による、髪のお手入れ・意識実態、および、毛髪径・硬さ・ダメージなどの物性測定を含む髪質調査。
*2 コルテックス細胞
毛髪を構成する三つの部位のうちの一つで、毛髪全体の約85%を占め、しなやかさ・形・色・太さなどの性質に寄与するコルテックスを構成する細胞。
図2 「しなやかな髪質」に特徴的な毛髪内部の物理的性質(※代表的な例)
花王株式会社 広報部
電話 03-3660-7041~7042
※社外への発表資料を原文のまま掲載しています。
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