【週刊粧業2020年3月2日号5面にて掲載】
「激変! ビフォア・アフター 山口直美、eri著(ダイヤモンド社)」という美容本がひそかに売れています。
著者は、予約7カ月待ちの美容コーチングとヘアメークアップアドバイスを行う姉妹ユニットです。タイトルを見ると、ガラッと顔を変えたり、若返ったりする整形メークノウハウを紹介しているような印象受けますが、違うのです。
この本で紹介しているのは、自然に若々しく垢抜ける方法です。
今まで美容に興味がなかったような普通のアラフォーやアラフィフの心にグサっと刺さったというのがヒットの要因のようです。年齢を重ねると、モテメークやトレンドメークをしたら「イタイ人」になってしまいがちですが、日本で人口が最も多いのは中年世代なので、この市場は伸びています。
女性潮流研究所でも最近、なるほど!と思うことがありました。女性誌の見出しから「シミ」や「たるみ」といった表現が減っているのです。
一方で続々と登場しているのが、共感できるキャッチコピーです。
「中性化する、私たちの顔へ」(婦人画報2月号)、「カバ?ブルドッグ? ペリカン?自分の顔が動物に見えはじめたら、すぐケアを! 2020年は重力に負けない宣言!『リフトアップ殿堂コスメ』発表!」(Precious2月号)、「『不意打ち顔』にギョっとしたらエイジングケアの始め時!」(InRed2月号)
「中性化」「カバ・ブルドッグ・ペリカン」「不意打ち顔」など、心当たりがある人にはグサっと刺さる秀逸な脅し表現です。こうしたワード開発は化粧品メーカーの方にとって、大いに参考になるのではないでしょうか?
美STで「SST(シミ・シワ・たるみ)」というインパクトのあるキャッチコピーが生まれてから、10年が経ちます。この頃はとにかく「若く見えるメーク」が求められていました。
現代では、シミ・シワがスキンケアで対応するべき「老化現象」とした場合、たるみはスキンケアだけではなく、ヘア・メーク・ファッションで総合的に対応するべき「老化印象」という意識が根づいてきています。
大人が大人のままキレイになれる今の時代。10年前よりもずっと生きやすくなっているような気がします。
日本は世界的に老年指数が高いながらも、「一生女子」といえる若々しい気持ちを持った女性が多い特殊な国です。これからも新しいエイジングの価値観を創造して、ますます女性たちが幸せに生きられる世の中になればいいと思うのです。