【週刊粧業2020年3月30日号4面にて掲載】
最近、女性誌の編集者へのヒアリングの際、「化粧品ブランドのタイアップ広告では『必ず人物を出してほしい』と言われるが、人選がとにかく大変」という話がありました。
今の時代、単に「綺麗だから憧れる」という人は求められていません。一方で、ディープな知識を持つ人や、身体を張って趣味の範疇を超えた活動をする人が注目を集めています。最近、女性たちの支持が高いのは以下の3つのパターンです。
まず、モデルなのに美容家レベルの情報発信をする、野崎萌香さんや中村理砂さんなどです。友達がオススメを教えてくれるように、インスタグラムでもオススメ化粧品を教えてくれたり、質問箱を設置して質問に答えたりと、モデルでありながら消費者との距離が近いことが特長です。
次に、美容家なのに女優レベルのビジュアルを持つ、石井美保さんや神崎恵さんなどです。細かいハウツーを指南するだけでなく、女優と同じ大きさの写真にも耐えうるビジュアル力を持つことが特長として挙げられます。
3つ目は、美容家芸能人の吉田朱里さん(アイドル)や田中みな実さん(アナウンサー)などです。
昨今、一般女性たちの美容マニア度もどんどん上がっています。これまではプチプラやデパコスが取り上げられることが多く、中価格帯はそれほど注目されていないと考えていました。
しかし今では、「プチプラより高機能! 高級コスメより続けやすい! リアルに使える 注目のミディプラコスメ(VoCE3月号)」という記事も掲載されるなど、本気で品質と価格のバランスを考えるようになっていることを実感します。
また、「プロの解説で、今日から読めるようになる!『化粧品の箱表示』読み解きドリル(美的3月号)」という記事にも、まさに今の時代性が色濃く出ていると思います。
さらに、「コスメ検定(日本化粧品検定)」の受験者数・資格保有者数も右肩上がりで増え続けるなど(受験者数=13年493名→19年 57万5780名)、一部の消費者のマニア欲求が加速しているようです。
こうした潮流は、化粧品業界に携わる人々の仕事にも大きく関わっていると思います。 私自身これまでは、化粧品会社で新製品の企画会議を行う際、「成分とか品質面の細かい話は難しいから消費者には分からないだろう」と、掘り下げるのを諦めてしまうことが少なくありませんでした。
しかし、今の時代はその意識を改めるべきでしょう。成分マニアの人たちは全体の人数と比べると一部ですが、熱い語りをしてくれるため「ヒットの火種」となってくれる可能性があります。