【週刊粧業2020年6月15日号12面にて掲載】
コロナ禍で、化粧品市場は大きく変わりました。インバウンド消費に頼れなくなったことはもちろん、マスク着用の常態化でメークに行動変容が起きました。
資生堂が想定した、コロナの影響から回復する2つのシナリオは、「ニュートラルシナリオで2021年」「ワーストシナリオで2023年」だそうですが、それまでボーッとしているわけにはいきません。時代の変化は新たなビジネスチャンス! と頭を切り替えて、今回は3つのトピックスについて考えていきたいと思います。
まずは、最も売り上げが下がった口紅です。個人的な体験ですが、はじめてのオンライン会議で、今まで愛用していたリップがカメラ越しでは、不自然に濃く見えて慌ててティッシュで拭き取ったことがありました。ファッションでは、「オンラインで映えるきれい色のトップス」が注目されていますが、美容ではキレイすぎると浮いてしまいます。
リモートワークがゼロにならないとすると、リアルに人に会う時の口紅とおうち口紅、市場が2つになったと考えてもいいかもしれません。「悪目立しない健康色」「重たくないつけ心地」「感触や香りの楽しさ」「唇のケア効果」などは、このニーズにあったスペックでしょう。リップクリームと口紅の間に需要がありそうです。
次は目元についてです。リモート会議では20・30代と40・50代の女性が一緒に画面に映ります。
そこで気づいたのが、年齢差は白髪やシワ、たるみではないということ。今の中年世代は肌も髪も若くて、若い世代とそんなに違いがありませんが、そんな中で最も違うのが目と眉の間隔だということを実感しました。やはり瞼の下垂の影響は大きいです。目のエイジングについては、眉ゾーンにも拡大するかもしれません。
最後にマーケティングです。4、5月はインスタを開いたら誰かがライブをやっているのを観るというのが日課の人も多かったでしょう。私がびっくりしたのが、飛び交うコメントです。
雑談を楽しむコーナーなのに、「商品名をもう一度お願いします!」というコメントが絶えず飛び交ってテレビショッピング化していたのです。既に中国ではライブコマースが盛んですが、日本はそういった趣とは異なり、美容の情報発信ではない場(音楽やエンタメのファンの集まりなど)で、コスメが爆発的に売れていく現象が随所で見られています。
我々は、美容に全く興味がない人をターゲットから外しがちです。この層にリーチするには、多大なコストがかかります。しかし、このようなアプローチ方法を見ると、ノンカスタマーに対する考え方も、先入観にとらわれずもう一度見直すべきだと思います。