【週刊粧業2021年2月1日号10面にて掲載】
かつてトレンド情報をキャッチするためには、日本の若い女性の動向を観測するだけで良かったのですが、Z世代の女性を中心に「おしゃれ」の発信源が「韓国」に移りつつある現在は、国内だけに目を向けるだけでは不十分になりました。
「今なりたいのは、おしゃれ顔韓国っぽあか抜けメイク(CanCam1月号)」「韓国でリアルにイケてるコスメReport(JJ1月号)」「韓国女子の間で流⾏ってる雑貨あつめました お部屋にちょっぴりKoreaを(Ray1月号)」などの記事は毎月のように掲載されます。
女性誌の編集者にヒアリングしたところ、撮影の参考にピンタレストの画像を収集していると、意識をしていなくても、コスメやファッション、雑貨について、「これ、いいな」「これ、うまいな」と思った画像が韓国のものが多いそうで、あらゆる分野のクリエイティブの情報ソースが日本ではなくなっていると感じます。
どうしてこのようなことが起こっているのでしょうか。
化粧品ではなくスイーツの話ではありますが、韓国と日本の発想の違いを感じたのが、「韓国式マカロン(通称トゥンカロン)」です。
形もトッピングも従来のマカロンとはかけ離れているのにもかかわらず、従来のマカロンよりもSNS映えします。こういった良い意味でのB級感は、日本人からは絶対に出てこない発想だと思いました。
日本では正当性や本物思考を重んじるため、ラデュレやピエールエルメなど、本家本元のフランスブランドに極力近づけたいという発想はあるものの、既存のものを破壊する方向にはなかなか行かないのです。
しかし、若い方にとっては、気分が上がる方が良いに決まっています。このように韓国のトレンドが発信源になったのは、2015年頃からですが、さらに2020年からは、中国の情報にもアンテナを張る必要が出てきました。
「今アツいのはチャイコスメ! おすすめのブランドとアイテムを、コスメオタクな中の人が紹介します(BuzzFeed Kawaii)」などの記事もあり、コスメに詳しい女の子はユニークな中国コスメを掘り出すことに夢中です。
Z世代はミレニアル世代と比較して、「どこの国の化粧品かはあまり気にならない」傾向が強いというデータもあり、それはつまり日本ブランドにとっての競合商品が格段に増えてきているということです。
化粧品企画担当者は、日本だけでなく韓国や中国まで市場分析の視野を広げていく必要があり、5年前と比較すると仕事のボリュームが格段に増えていることを実感している今日この頃です。