【週刊粧業2021年7月19日号14面にて掲載】
フェムテックに参入する企業の数がかなりの勢いで増えているそうです。
少し前に化粧品のスタートアップにチャレンジしていたような若い女性が、今はこの分野に果敢にチャレンジしています。
「フェムテック(femtech)」とは、女性(female)と、テクノロジー(technology)を組み合わせた造語です。フェムテック業界は、2025年までにグローバルで500億ドル(約5兆4000万円)規模の成長が見込まれています。
生理、妊活、妊娠、授乳、更年期、PMS、ホルモンバランスによる肌トラブルなど、女性特有の課題がありますが、これらをテクノロジーを使って解決するというものです。
とはいえ、現在、日本で進出する新興企業は、吸水ショーツ、妊よう性にアプローチするアプリやサプリ、デリケートゾーンウォッシュといったところで、テクノロジーによるイノベーションまでは未知数のため、「フェムケア」と呼ばれるコスメやファッションに近いカテゴリーから育っているのが現状です。
フェムケアは、店頭で色や使用感を試したいというニーズが化粧品ほど高くありませんし、カウンセリングをするのもちょっと恥ずかしいと感じる人が多いようです。そのため、ECでの販売方法との親和性が高く、小規模な起業に向くビジネスモデルです。
今年の春には、大手でもエポックメイキングなことがありました。
伊勢丹新宿店で行われたフェムテックをテーマにしたPOP UPは大きな話題になりました。
「あの伊勢丹にバイブレーターが!」という部分的な話題にしか響かなかった人が少なくなかったのは少し残念でしたが、フェムテックを経てセクシャルヘルスがヘルシーに語られて、女性のQOL向上に意識を向けてもらいやすくなるのはプラスのことです。
身近な話では、ファッションやビューティー業界の人間が、友人に「デリケートゾーンウォッシュ」をプレゼントしたところ、すごく引かれてしまったというエピソードがありました。「夫に見られたら恥ずかしい」という理由だったそうです。
女性同士、女性と男性、いろいろな角度から「格差」があり、テクノロジー以上に理解と支援が求められる分野であることが、この市場が抱えている大きなハードルでしょう。
化粧品会社は薬機法があるため、この分野(特にホルモン関連)にダイレクトに参入することは難しいといえます。
しかし、社内ベンチャーやオープンイノベーションで新たな風が生まれ化粧品ビジネスが、ボーダレスになる時代もそう遠くないかもしれません。