【週刊粧業2021年9月20日号4面にて掲載】
昨今、化粧品業界の業界地図は大きく変わりました。最近、特に顕著なのが異業種企業やスタートアップの化粧品ビジネスへの参入が加速していることです。
今までの化粧品は、広告費や初期投資が大きな参入障壁と考えられていましたが、デジタルマーケティング支援企業や、小ロット生産が可能な国内外のOEM企業が増加し、また、SNSの普及による市場の成熟化により消費者が必ずしも有名なメーカーに固執することがなくなり、個性的な商品を求めるようになったことで、新規参入が容易なビジネスに変化しました。
参入障壁の低さはメリットではありますが、持続的な経営活動につながる企業はごくわずかという過酷な状況であることも見逃せない事実です。
大手化粧品メーカーも過渡期を迎えています。従来のマスマーケティングが通用しなくなり国内での成長は鈍化しています。そのため、国内市場と同時に特に中国をはじめとするグローバル市場を経営の重点項目に置くことが急務となっています。
このようにどの企業も変化し続けなければ生き残れない時代となりました。そのために必要なのは優秀な人材であり、特に社内で育成することは非常に重要な課題です。
化粧品業界は独自のマーケティング手法や経営視点に基づいた意思決定を行うことが必要な業種のため、一般的なビジネス書や他業種のセミナーでフォローしきれないことが多く、一部の大企業以外は、体系的に学ぶ機会を得ることはできないのが現状です。
私自身、会社員時代に非常に苦労したのが、寿司屋の見習職人のように、先輩や上司の仕事を横目で見て学ぶしかなかったことです。この手法は学びが多かったものの、自信を持って業務を遂行できるようになるまでかなりの時間を必要としました。
仕事で出会う若手社員もこうした悩みを抱えている人が多く、また、コロナ禍に突入してからは、先輩の仕事に触れる機会も少ない状況になってしまいました。
このような危機的環境で、「何らかの形で化粧品業界に貢献できることはないか」と思い立ち、人材育成のための教科書を執筆することを決意しました。
着手してから1年以上経ってしまいましたが、9月に「図解即戦力 化粧品業界のしくみと仕事がこれ1冊でしっかりわかる教科書」(技術評論社、1650円)を上梓いたしました。
マーケティング、経営、法規制、中国戦略、イノベーションなど、さまざまな情報を平易に解説しています。リモート勤務でままならぬ社員教育に少しでもお役立ていただければ幸いです。