【週刊粧業2022年1月31日号8面にて掲載】
昨年の9月に「図解即戦力 化粧品業界のしくみと仕事がこれ1冊でしっかりわかる教科書(技術評論社)」を上梓したところ、化粧品業界の皆様から多くの反響をいただきました。改めて、人材育成について悩みを抱えている企業が多いことを実感した次第です。
大手メーカー、新興企業、異業種参入と規模はバラバラではありますが、「化粧品」という特殊な消費財(機能的価値も情緒的価値も必要)であるという難しさは共通しています。
化粧品会社が生き残っていくためには2つの異なるタイプの人材が必要だと考えています。「これまでの商品の売上げを伸ばせる人材(連続的なイノベーションに向いた人材)」と「今まで存在しなかったような画期的な商品を企画できる人材(非連続的なイノベーションに向いた人材)」です。
前者についてはキャリアを積めばコツが分かってくるのですが、後者については、元々のセンスや生育環境履歴、世代特性が大きく影響すると思います。特に、「SNSネイティブか否か」は重要なポイントではないでしょうか。
現在、仕事と並行して大学で「ビューティー・マーケティング」の講義を担当しているのですが、やはり生粋のSNSネイティブである大学生からは、アッと驚くようなアイデアが飛び出してきます。非連続のイノベーションを起こす人材として、日本の若い世代の力は絶大だと確信しました。
とはいえ、大きな課題があります。それは、「企業はそういう人材を見抜いて登用ができるのか」ということです。化粧品会社は女性にとってアナウンサーと並ぶような競争が激しい職種であり、現在の就職活動では他の業界同様にプレゼン上手な人が勝ち残っていくように思えます。
イノベーティブなアイデアをつくる未来のヒットメーカー候補は、化粧品業界の就活では本領を発揮できないかもしれません。なぜなら現代型の面白いアイデアを出す人は、オタク的なキャラクターが多いように思えるからです。
例えば、大学の課題で業界人では気づかないようなアイデアを発表してくれたのも、趣味で「絵師(趣味でイラストをやってSNSなどにアップしている人)」をしている学生でした。そうしたことからも、就活スキルとは別の才能の発掘ができる目利き力が重要だと改めて感じました。
韓国や中国などの商品競争力が高まり、日本発の化粧品はユニークさに欠けるという残念な評価を受けることも少なくありません。
日本の化粧品業界全体でヒット企画人材育成について考える必要があると思いますし、私自身も今年の目標としていきたいと思っています。