【週刊粧業2022年4月25日号11面にて掲載】
化粧品やアパレルで展開しているグローバルブランドのベースメーク市場への参入が活発化しています。
今年の春、エルメスとルブタンというハイエンドなラグジュアリーブランドが本格参入しました。
エルメスは、「エルメス・プラン・エア」を3月1日より販売、クリスチャン ルブタンは、「フェティッシュ ルクッション」を4月15日に発売しました。フェティッシュ ルクッションについては、ダイヤモンドパウダーを配合しているほか、パッケージもルブタンお家芸の赤を使用し、フタにはエンブレムのデザインが施されています。
こうした流れに最初に火をつけたのは、ディオールです。2020年に発売された「ディオールスキン フォーエヴァー クッション」の限定品「ディオール ロゴマニア」は、幻の限定品ともいわれて大ヒットとなりました。
ディオールのトートバックは40万円近く払わないと手に入りませんが、こちらのコンパクトなら8690円で手に入れることができるのですから、ヒットするのは当然のことといえるでしょう。エルメスやルブタンも参入しない手はありません。
その道20年のラグジュアリーファッション誌の美容エディターと話していたのですが、ハッとするようなコメントがあったので紹介します。
「ラグジュアリーブランドがフレグランスを出すことに対して違和感はありません。ただ、あとに色もの(リップ、ネイル)を出してくると、ちょっと幻滅する気持ちになりますね。さらにファンデーションが出てくると、特別感が薄らいで、ブランドの神通力が弱くなってしまう気がします。ルブタンやエルメスには遠い存在でいてほしい、普通の化粧品ブランドになってほしくないというのは、ファンのわがままなのでしょうか?」というものでした。
このコメントには私も深く同意しましたが、それは古い人間の発想かもしれません。現在、グローバルブランドが狙っているのは中華圏を中心としたZ世代です。
このターゲットにおける「見せびらかし消費」の欲求はまだまだ続きます。化粧品の品質の良さは当たり前、ブランドの小物をアクセサリー感覚で所有することに価値を感じるのです。
化粧品メーカー側としても、ファンデーションが売れることは経営的にプラスの面が大きいでしょう。口紅と違ってレフィルでリピートを促すことができるからです。
ブランドの個性を表現することができるラグジュアリーブランドのベースメークは、化粧品とファッション小物の間のような新しいカテゴリーに変化しはじめているといえるでしょう。