第85回 ラグジュアリーブランドのベースメーク戦略

【週刊粧業2022年4月25日号11面にて掲載】

 化粧品やアパレルで展開しているグローバルブランドのベースメーク市場への参入が活発化しています。

 今年の春、エルメスとルブタンというハイエンドなラグジュアリーブランドが本格参入しました。

 エルメスは、「エルメス・プラン・エア」を3月1日より販売、クリスチャン ルブタンは、「フェティッシュ ルクッション」を4月15日に発売しました。フェティッシュ ルクッションについては、ダイヤモンドパウダーを配合しているほか、パッケージもルブタンお家芸の赤を使用し、フタにはエンブレムのデザインが施されています。

 こうした流れに最初に火をつけたのは、ディオールです。2020年に発売された「ディオールスキン フォーエヴァー クッション」の限定品「ディオール ロゴマニア」は、幻の限定品ともいわれて大ヒットとなりました。

 ディオールのトートバックは40万円近く払わないと手に入りませんが、こちらのコンパクトなら8690円で手に入れることができるのですから、ヒットするのは当然のことといえるでしょう。エルメスやルブタンも参入しない手はありません。

 その道20年のラグジュアリーファッション誌の美容エディターと話していたのですが、ハッとするようなコメントがあったので紹介します。

 「ラグジュアリーブランドがフレグランスを出すことに対して違和感はありません。ただ、あとに色もの(リップ、ネイル)を出してくると、ちょっと幻滅する気持ちになりますね。さらにファンデーションが出てくると、特別感が薄らいで、ブランドの神通力が弱くなってしまう気がします。ルブタンやエルメスには遠い存在でいてほしい、普通の化粧品ブランドになってほしくないというのは、ファンのわがままなのでしょうか?」というものでした。

 このコメントには私も深く同意しましたが、それは古い人間の発想かもしれません。現在、グローバルブランドが狙っているのは中華圏を中心としたZ世代です。

 このターゲットにおける「見せびらかし消費」の欲求はまだまだ続きます。化粧品の品質の良さは当たり前、ブランドの小物をアクセサリー感覚で所有することに価値を感じるのです。

 化粧品メーカー側としても、ファンデーションが売れることは経営的にプラスの面が大きいでしょう。口紅と違ってレフィルでリピートを促すことができるからです。

 ブランドの個性を表現することができるラグジュアリーブランドのベースメークは、化粧品とファッション小物の間のような新しいカテゴリーに変化しはじめているといえるでしょう。
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廣瀬知砂子

女性潮流研究所 所長 / 商品企画コンサルタント

実践をモットーとする化粧品コンサルタント 現場発想で生み出した独自の商品企画法やトレンド分析法で、大企業から中小企業まで多くのヒット商品を手がけている。

http://www.beautybrain.co.jp/

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