【化粧品の環境・社会課題を知る「クリーンビューティー」講座】
2015年の国連サミットでSDGsが採択され、2017年のダボス会議にて、SDGs関連市場が12兆ドルになると予想され、事業と社会課題解決の両立が求められるようになった。グローバルでサステナビリティ・SDGsがトレンドとなり、日本国内でも2019年ごろから話題となる。
2021年の気候変動サミットでは、日本を含めた先進主要国が気候変動に対して目標を設定するなど、グローバルでマイナス1.5℃を達成するための様々な方針が定められた。
しかし、SDGsやサステナビリティといった言葉が盛んに言われるようになった2019年以降、化粧品業界に限らず、国内では言葉が独り歩きし、正しい理解やアピールが欧米ほど進んでいない現状がある。
サステナビリティという言葉の出現は、1970年のストックホルム会議まで遡る。これまでの起こりうる環境問題への対応といった視点ではなく、1990年代に行われたRIO+20でも、これまでの環境保全から、産業や社会との持続可能性ということが重視されるようになった。
こういった経緯がなかなか伝わってこなかった日本では、もはやMDGsも飛び越え、先にSDGsのワードが先行してしまった。そのため、SDGsという言葉はよく見聞きするものの、内容まで知っているというのは今年の統計でも半分以下となっている。
日本のSDGs達成度は、国連加盟国のうち19位となっており(2022年)、決して進んでいないわけではないのだが、このように欧州のサステナビリティ先進国と比べると、未だに遅れやこのようなギャップがあるのはめずらしい現象である。
国内化粧品業界においては、2019年ごろ、アパレルのコレクションブランドからの発信でサステナビリティが求められ、それに百貨店など小売の注目が高まったことが契機となり、少しずつサステナビリティ・SDGsへの注目が高まってきたが、今でも他業界に比べ達成の遅れや”ミスアンダースタインディング(誤解)”が生じている。
独自調査によれば、化粧品業界のサステナビリティ市場規模は、0.02%(2020年)→0.1%(2021年)→1%(2022年)と推移。今年度は、これよりも多少伸長すると予想されるが、数字を見ると遅れが際立っている。
化粧品の環境・社会課題についても知られる機会が少なく、企業も消費者も何から行っていけばよいのかわからない場合が多い。また日本の化粧品市場の特性もこれに拍車をかけている。
化粧品業界では、①サステナブルな原料調達(生物多様性への理解不足・SCMの不十分)、②CO₂をはじめとした温室効果ガスの削減(グリーンエネルギーへの転換・窒素やリン削減への理解不足)、③サーキュラーエコノミーの難しさ・廃棄物問題などにいまだに課題がある。
これだけでなく、近年では、労働や人権問題、アニマルウェルフェアなどの社会問題も言及されることも多くなった。またこれらは、化粧品業界に限ったことではない。化粧品などの加工産業および先進国での嗜好品産業では、達成しなければならない課題となっている。