コロナから解放されたはじめての秋、化粧品業界においてはどんな動きがあったでしょうか。通常、秋のメイクでは、ボルドー、パープル、オレンジ、ブラウン、グリーン、マスタードといった定番の秋色がありますが、今年はそれとは異なる動きが見られます。ズバリ、秋なのに曖昧色ブームです。
ファッション誌では「あたたかく淡色(GISELe10・11月号)」「旬なベージュのジェントルメイク。(FIGARO japon10月号)」「桜茶メイク(VoCE10月号)」「大人の透明感にはシアーなコスメを。(Gina 2023 Fall)」「淡色パレットを目の形別に似合わせる!(nonーno10月号)」など、秋らしからぬ淡色の提案が目立ちます。
X(旧Twitter)でエンゲージメントが高いバズ投稿を見てみると、「ちふれ ティント リップ ジェル」(全3色各1100円、9月1日発売)のピンク系158番が話題に上がっており、これまでの秋トレンドと比較すると意外に感じました。ミルキーで黄みがかった艶やかなピンクだからです。バズった理由は色だけではありません。クチコミワードを見てみると、「ねちゃねちゃする」「むっちりする」「むちむち」「もったり系」「もちもち感」「ちゅるちゅる」など、珍しいコメントがみられます。
「韓国ティントにあるみずみずしい艶というよりは、むちっと厚みのある艶」「最近あんまりない系」「髪の毛にくっつきすぎる」という声など、昔ながらのグロスの厚みのある質感が一周回って新しく感じられているようです。このように当たり前の質感がユーザには新鮮に見えることがあり、業界関係者はこれらの変化を敏感にキャッチする必要があります。
ところで、X(旧Twitter)でバズってはいますが、現時点では公式サイトでもAmazonでも購入が可能で、どこにいっても買えないという現象にはなっていません。おそらく今のところはコスメが好きな一部の層を中心に熱い支持を集めているためでしょう。1100円という価格に対して、「ちふれにしては高い」という声や「ケチくさいけどロムアンドと同じ値段か(と思うと手を伸ばしづらい)」といった意見がありました。
リップは「見せびらかし消費」の象徴的な商品でもあるので、その対極にある実直で堅実な「ちふれ」の場合、ヒット化するスピードは緩やかになります。
この事例に限らず一気に上がると一気に下がりますし欠品も起こしますから、このまま定番の名品としてジワジワと売れ続けることが理想ですよね。とはいえ、不確実性が高く、持続性も予測できず、コントロールできないのがバズコスメの難しい点でもあります。