【週刊粧業2023年11月27日号10面にて掲載】
2023年秋、大手国産ブランドにおいて「こすらない」をコンセプトとするユニークな商品が増えてきたように思います。
「KANEBO メロウ オフ ヴェイル」は、指を滑らせるだけで汚れを吸い上げる「ヴェイリングオフ技術」で、「こすりすぎたくないけれどもちゃんとメイクをオフしたい、しかし強い洗浄成分は避けたい」というニーズに応えます。
「プリマヴィスタ デイトリートメントバーム 〈ローラータイプ〉」は、「こすらずに、ローラーでツヤをのせるバーム状の美容液ファンデ」で、オリジナルのローラーで塗ることによって摩擦を起こさない工夫がされています。
敏感肌をターゲットにしている「キュレル」と「イハダ」においても、肌に負担をかけにくいとされるミルクタイプの洗顔料を発売しました。
「キュレル 乳液ケアメイク落とし」は、「乳液ケア」と表現し、「イハダ 薬用うるおいミルク洗顔料」は、高精製ワセリン配合という点でケア効果を最大限にアピールしています。
これらの製品は最近のトレンドである「こすらない」というニーズをとらえたものですが、なぜ今このコンセプトがクローズアップされているのでしょうか。
美肌を追求するイノベーター層にとっては、人気美容家の石井美保さんが長らく「こすらないケア」を提唱しているため常識になっていましたが、一般のユーザーにも浸透するようになったのはここ最近のことです。
大きな啓蒙活動になったのが、インフルエンサーによる「モーニングルーティン」や「GRWM」のYouTube動画が2019年頃から定番化したからでしょう。
これらの動画では、「洗顔」「ブラッシング」「白湯を飲む」など、名も無き動作もキラキラして見えるように工夫されています。
それらの影響により、「毎日コツコツと丁寧に自分をケアしている」というご自愛マインドが時間をかけて浸透していったものと考えられます。
このようにユーザーの意識や価値観の変化によって新しい市場は生まれますから、新しい技術革新がなかったとしても、今の時代の気分に合えばヒットも望めます。
事例として「こすらない」というコンセプトのものを取り上げましたが、もちろん「毛穴の汚れを徹底的にオフする」というトレンドが終わったわけではありません。
この「こすらない」というトレンドを適切に取り入れながら、「製品の独自性がターゲットのニーズにピタッと合っているか」という点が重要であり、マーケターの皆さんにおいても注意していただきたいポイントといえるでしょう。