【週刊粧業2024年9月23日号9面にて掲載】
いよいよEUで、グリーンウォッシュに関する本格的な規制が始まった。以前の号で法案が起草されたと書いたが、ついに今年の3月に法案が発表された。この規制が出たことで、原料や製品を海外に多く頼る日本ではどのような対応が必要になるだろうか。
化粧品のみならず一般的なマーケティングにおける訴求開発では、製品の機能性だけでなく、近年、気候変動リスク、大気や水の汚染リスク、サプライチェーンにおける原材料やエネルギー問題、生物多様性への配慮など、多岐にわたる環境問題に配慮する要素が求められてきた。これらは、グリーンマーケティングと呼ばれる。グリーンウォッシュは、主にマーケティングの分野になり、グリーンマーケティングを誤解なく支える戦略の1つであると考えられる。
EUのグリーンウォッシュ禁止法は、科学的根拠に基づく訴求内容の立証や、外部機関による検証、消費者への詳細な内容の開示など、企業が満たすべき環境訴求の最低要件を導入することで、グリーンウォッシュの防止を目指すものだ。科学的根拠に基づく訴求内容を立証させるために、第3者機関によるエビデンスが求められる。認証はその一つである。エビデンス提示なしでの、例えば「ゼロエミッション」や「責任ある……」などが使えなくなる。
認証は本来、環境問題や社会的問題にいかに配慮しているかを消費者やサプライヤーなどに示すために使用されるもので、ヨーロッパでは兼ねてから認証が重要視されている。環境に配慮したオーガニック製品などに付与される認証は、農業などに還元するため付与される。また、欧米で盛んなクリーンラベルの観点でも、原料やパッケージ、ビーガンなどの食習慣、アニマルウェルフェアや人権問題などの社会問題を認証で示すことで、消費者にその利点のみならず製品選定の基準を与えている。
日本で今後危惧される側面としては、認証が取れているからといって、認証されたもの以外の環境的訴求がなされてしまうことである。まずは課題やその背景をよく理解し、認証の範囲もしっかり確認する必要がある。
今後、特にヨーロッパから輸入した原料や製品を国内でマーケティングする場合には、基本的には認証などのエビデンスに基づいた戦略が求められる。また、国内でもそれらを管理監督する機関も必要であるが、それ以前にまだまだウォッシュについては国内ではよく理解されておらず、トレンド性に基づいたものや一般消費者にわかりやすい訴求となっているため、企業内での教育も徹底する必要がある。
長井美有紀
日本サステナブル化粧品振興機構 代表理事
化粧品業界に長く、早くから「環境×化粧品」を提唱。業界・企業・一般に化粧品の環境・社会課題について解く。サステナブル美容の専門家としても活躍し、主に生物多様性と産業について研究。講演や執筆、大学での講義などで幅広く活躍。
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