【美容業界】市場規模は?現状や課題、今後の展望について解説

こちらのコーナーでは、【美容業界】市場規模・現状・課題・今後の展望について解説していきます。


美容業界の市場規模

美容業界(美容室)の市場規模は1兆3543億円

ホットペッパービューティーアカデミーが全国の人口20万人以上の都市居住者のうち、15~69歳の男女1万3,200人を対象に行った過去1年間における美容室・理容室の利用に関する実態調査によると、美容室の市場規模(2024年)は、1兆3543億円で前年比-0.1%とほぼ横ばいで推移しています。


日本の美容業界の現状・課題

日本の美容業界は、消費者の多様なニーズや技術の進化に対応しながら、安定した成長を続けています。しかし、いくつかの特徴的な課題も見られます。

1. 業界の規模と競争の激化

日本には数多くの美容室があり、その数は約25万店とも言われています。人口に対する美容室の割合が非常に高く、特に都市部では店舗間の競争が激化しています。美容師の供給は多いものの、客単価の低下や過剰な店舗数が利益を圧迫する要因となっています。

2. 低価格サロンチェーンの台頭

カット専門店の「QBハウス」など低価格サロンチェーンが増加し、時間をかけず安価にカットを提供するビジネスモデルが消費者に支持されています。これにより、従来の中価格帯の美容室は価格競争に巻き込まれることが多く、付加価値を提供しなければ生き残りが難しい状況です。

3. 多様化する消費者ニーズ

若者の間では、SNSの影響でトレンドに敏感なスタイルを求める声が強くなっています。一方で、高齢化社会が進行する中で、シニア向けのケアやメンテナンスを重視する店舗も増えています。さらに、男性美容市場も成長しており、男性向け美容室やヘアケアサービスが広がりつつあります。

4. 技術革新とデジタル化

デジタル技術の進展により、美容室の運営も変わりつつあります。たとえば、予約管理システムやオンライン予約アプリの普及により、顧客管理や効率的な集客が容易になっています。また、AIを使った髪質分析やスタイル提案システム、VRを使って自分の新しい髪型を事前に確認する技術なども登場してきています。

5. 人材不足と労働環境の課題

美容師は技術職であり、資格取得には時間がかかる上に、給与水準が他業種に比べて低い傾向があります。そのため、特に若年層の美容師の離職率が高く、経験豊富な人材が不足しています。また、労働時間が長く、休日が少ないなど、厳しい労働環境の改善も求められています。

6. サステナビリティと環境配慮

環境問題に対する関心の高まりとともに、美容室でもサステナブルな取り組みが進んでいます。たとえば、オーガニックヘアケア製品の使用や、リサイクル可能な包装材を使用した商品の提供が増えています。

7. コロナ禍の影響

新型コロナウイルスの流行により、美容業界も大きな影響を受けました。特に感染拡大初期には、多くの店舗が一時休業を余儀なくされました。その後、感染防止対策を徹底した上で営業が再開されましたが、ソーシャルディスタンスや消毒の徹底など、新しい衛生基準に対応するための負担が増しています。

まとめ

美容業界は競争が激しい一方で、低価格サロンから高級志向のサロンまで多様化が進んでいます。消費者のニーズや市場のトレンドに敏感に対応し、技術やサービスで差別化を図ることが求められる一方で、人材確保や労働環境の改善といった課題にも直面しています。これからはデジタル化や環境配慮がさらに進み、新たな価値を提供することが生き残るうえで鍵となるでしょう。


美容業界の今後の展望

美容業界が発展するためには、いくつかの重要な課題に取り組み、変化する市場や消費者のニーズに対応していくことが求められます。そのポイントをいくつか挙げます。

1. サービスの差別化と付加価値の提供

競争が激しい中で、価格だけでなく、独自のサービスや体験を提供することで差別化を図る必要があります。

髪質やライフスタイルに合わせた個別対応のヘアケアやスタイリング提案を提供することや、リラックスできる空間や癒しの時間を提供する高品質なサービス体験を提供すること、男性専用のサービスを提供することが成長のカギとなります。

2. デジタル技術の活用

「オンライン予約・顧客管理システム」や「SNSマーケティング」「AIやVR技術の導入」など、デジタル化を推進し、顧客との接点を強化することが今後ますます重要になります。

3. 労働環境の改善と人材育成

美容師の離職率が高い問題は業界全体の大きな課題です。業界が発展するためには、給与・待遇の改善、労働環境の改善(働き方改革)、教育と研修の充実が不可欠です。特に若手美容師に対する技術教育や、最新のトレンドや技術を学べる環境を整えることで、業界の魅力を高めることが将来的な成長につながっていきます。

4. サステナビリティと環境意識の向上

エコ意識の高まりに応じて、持続可能な経営が求められています。環境に配慮したサービスや製品に対する関心が高まっており、サステナブルなビジネスモデルが美容業界の発展に貢献します。

5. 高齢化社会への対応

日本は急速に高齢化が進んでおり、美容室業界もシニア層に対応するサービスの強化が必要です。髪のケアだけでなく、リラクゼーションや健康をサポートするサービスを提供したり、高齢者や身体が不自由な方のために訪問美容サービスを拡充することも成長に向けては不可欠な取り組みといえます。

6. 地域密着型のビジネスモデル

地域に根ざした美容室は、地元のコミュニティとの関わりを深めることで、長期的な信頼関係を築くことができます。地域イベントへの参加や、地域限定のプロモーションなど、コミュニティとの結びつきを強化することが、リピーターの獲得につながります。

まとめ

美容業界がさらに発展するためには、サービスの差別化、デジタル技術の活用、労働環境の改善、サステナビリティの追求が重要なカギとなります。

また、高齢化社会や地域コミュニティとの連携も、今後の成長を支える要素となります。これらの施策を積極的に取り入れることで、美容業界は変化する市場に対応しつつ、持続的な成長を遂げることができるでしょう。

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