ライオンは、制汗剤の機能を強化する新技術を開発したことを受け、11月9日、「イオンの力に着目した制汗剤の新技術について」と題し技術説明会を開催した。
第1部では同社ビューティケア研究所・副主任研究員の佐藤円康氏が登壇し、「イオンの力による殺菌技術と滞留性を向上する技術の開発」を説明した。
研究では、ニオイ発生菌の菌体表面がマイナス電荷を有した帯電状態で、プラス電荷を持つ殺菌成分とイオン結合させることにより、殺菌効果が向上することを突き止めた。そして、体臭原因菌を用いた殺菌力実験を行った結果、プラス電荷の殺菌成分「ベンザルコニウム塩化物液」と「塩化ステアリルトリメチルアンモニウム」を併用する新技術により、これまでにない高い殺菌効果を見出したが、発汗によって殺菌と制汗の有効成分が皮膚上で流れ落ちてしまうことが課題となっていた。
そこで、モデル皮膚を用いた制汗成分の残留量を指標とした滞留成分の評価を実施した。有効成分の滞留率が80%以上で約8割の人が防臭効果を実感する滞留成分の開発に取り組み、「酢酸ビニル・ビニルピロリドン共重合体」と「ポリオキシプロピレンブチルエーテル」の2つの滞留成分を発見。独自の新技術で配合することにより、滞留率81%を実現している。
以上のことから、「独自の滞留成分を配合した製剤は、高い殺菌力と制汗力を有することで、従来以上の防臭効果を実現している」(佐藤氏)とまとめた。
続いて、第2部では、同研究所・副主任研究員の藤山昌彦氏が「新不織布とパウダー技術によるシートのふき取り性向上技術」について説明した。
同社が実施した調査によると、汗ふきシートを購入するうえで「さっぱり感」を重視している人が最も多かった。そこで、25~34歳女性40名に対して評価試験を行った結果、汗やべたつきの「ふき取り性」がさっぱり感と高い相関があることがわかった。この結果を受けて、「皮脂と汗をしっかりとふき取る厚手の新たな不織布の開発と皮膚上で優れた皮脂吸着効果を示すパウダーを配合し、さっぱり感の向上をめざした」(藤山氏)という。
新不織布は、ふき取り実感につながる丈夫さとヨレにくさを実現した合成繊維層を3層構造で中層に採用。厚みが増した立体加工メッシュシートが皮脂を効果的にふき取る。
さらに、ナノイオン吸着パウダー「超多孔質シリカ」(平均粒子径12μm)の粉体内部に多数の細孔(穴)があるため、多量の油分を吸着。これにより、汗や皮脂のふき取り性が向上している。
実際に、25~34歳女性38名を対象に行った調査では、8割以上が「しっかりふき取れる」(85%)、「さっぱり感がよい」(95%)と答えており、新開発シートへの評価はいずれも高かった。
なお、今回の3つの新技術(滞留性、殺菌、不織布+含浸液)は特許出願中で、研究成果は、「2011年度日本味と匂学会第45回大会」(10月5~7日、金沢)にて発表されている。
この記事は粧業日報 掲載
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