花王、関節の動きを解析するモニタリング技術を確立

粧業日報 2023年11月14日号 1ページ

カンタンに言うと

  • スマホをお腹に抱えて8歩歩くだけで歩行の姿勢や癖を見える化
花王、関節の動きを解析するモニタリング技術を確立
 花王は、産業技術総合研究所(産総研)との共同研究により、歩行時の骨盤の3軸加速度データから、骨盤や下肢関節の動きや姿勢を可視化し、スコア化する歩行メカニクスモニタリング技術を確立した。

 さらに同技術を応用し、スマートフォンをお腹に抱えて8歩歩くだけで歩行の姿勢や癖を評価できる研究アプリ「Walk Coordinator」を開発した。この技術を歩行機能が低下する原因を明らかにするツールとして研究開発に応用し、人々の心身の健康増進に貢献していく。

 同社は、歩きやすい紙おむつの開発や高齢者の歩行・健康支援などを目指し、10年以上にわたって歩行解析技術の開発を進めてきた。近年では、詳しい歩行の状態をより簡便に解析する技術の検討を行っている。

 我々が日常的に利用しているスマートフォンの多くには3軸加速度センサーが搭載されており、歩数や睡眠のデータなど、健康情報をまとめてアプリに記録することができる。そこで今回は、産総研の研究チームと共同でスマートフォンを活用し、簡単かつ詳細に歩行時の姿勢や癖を視覚化する技術の開発と応用を目指した。

 歩行動作には骨盤や下肢関節の動きが大きく関わることから、歩行解析にはその様子を推定することが必要だ。そこで、産総研が保有しているAIST歩行データベースの20~70代(274名)の1歩行周期データを用いて、骨盤の動きに関する加速度データから、骨盤・下肢関節角度データの推定を試みた。

 骨盤の動き(606変数/1名)と骨盤・下肢関節角度データ(2424変数/1名)をそれぞれ主成分分析し、歩行動作を推定するモデル(関係式)を構築した。この推定モデルを用いると、スマートフォンで計測された加速度データからでも、歩行時に骨盤や下肢関節が動く様子を連続的に再現し、詳細に視覚化することができた。

 さらに、花王が約2万人の歩行データから作成した歩行の基準値と推定結果を照らし合わせると、歩行の姿勢を得点で評価することも可能となった。
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