ライオン、口腔細菌叢を考慮した予防法の提案を目指す

粧業日報 2023年11月16日号 2ページ

カンタンに言うと

  • 口腔内の硝酸還元菌の存在割合を増やすことがう蝕や歯周病の予防に
ライオン、口腔細菌叢を考慮した予防法の提案を目指す
 ライオンは、メタジェン、日吉歯科診療所と共同で、予防歯科習慣普及に向けた取り組みの一環として、う蝕・歯周病罹患者の歯科治療前後の口腔細菌叢を調査した。その結果、う蝕・歯周病罹患者の口腔細菌叢は、歯科治療後も、口腔状態が良好な人と比較して、う蝕・歯周病に関連する細菌の存在割合は多く、う蝕・歯周病予防に寄与する可能性のある硝酸還元菌の存在割合が少ないなど、口腔細菌叢が異なることを解明した。

 この研究成果は、9月12日付で米国微生物学会のオンライン科学雑誌「mSystems」に掲載された。

 近年、う蝕・歯周病罹患者の口腔細菌叢は、口腔状態が良好な人とは異なり、細菌叢のバランスが乱れている可能性が報告されており、口腔細菌叢の乱れを整えることが予防に重要であると言われている。また、う蝕や歯周病は歯科医院での治療後も、再発しやすい疾患と考えられている。

 そこで同社は、歯科治療前後の口腔細菌叢とう蝕や歯周病との関わりを解明することが両疾患予防につながると考え、細菌叢の網羅的解析を強みとするメタジェンと、予防歯科を専門とする日吉歯科と共同で、歯科治療前後の口腔細菌叢を調査した。

 2018年2月~2020年12月に日吉歯科へ来院した人の中で、基準を満たした人(う蝕群412名、歯周病群516名、口腔健常群(健常群)22名)を対象に、歯科治療前、歯科治療完了時、セルフケア移行後の3回唾液を採取し、調査を行ったところ、う蝕群、歯周病群と健常群の口腔細菌叢を比較した結果、両口腔疾患群で歯科治療前、歯科治療完了時、セルフケア移行後の口腔細菌叢が、健常群と有意に異なることが明らかになった。

 また、健常群と比較して両口腔疾患群の口腔内において存在割合が有意に多い細菌種を特定し、健常群と両口腔疾患群で比較した結果、両口腔疾患群は健常群よりもう蝕・歯周病に関連する細菌の割合が歯科治療前だけではなく、セルフケア移行後も多く、特に歯周病群は歯科治療完了時も多いことが明らかとなった。

 さらに、健常群と比較して両口腔疾患群の口腔内で存在割合が有意に少ない細菌種を特定し、健常群と両口腔疾患群で比較した結果、両口腔疾患群は健常群よりも、硝酸還元菌の割合が、歯科治療前だけではなく、歯科治療完了時、セルフケア移行後も、低い傾向であることが明らかとなった。硝酸還元菌が産生する代謝物は、口腔内の酸性度低下抑制やう蝕や歯周病に関連する細菌の増殖を阻害する可能性が報告されており、口腔内の硝酸還元菌の存在割合を増やすことが、う蝕や歯周病の予防につながる可能性が示唆された。

 以上の結果より、う蝕群、歯周病群は歯科治療後も、口腔状態が良好な人と比較して、口腔細菌叢が異なることが明らかとなり、う蝕・歯周病の再発につながりやすい状態である可能性が示唆された。う蝕・歯周病予防に向けて、口腔細菌叢を考慮した新たな予防法が重要であると考え、研究活動を推進していく。

 具体的には、口腔細菌叢に着目し、生活者のライフステージにおける口腔細菌叢と口腔疾患の関係について研究を加速させることで、お口を起点とした健康増進への貢献を目指していく。
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