ハラールとは、イスラム法に基づく「ハラール=許された」という意味で、反対の言葉として「ハラーム=許されない」や「ナジス=不浄」といった言葉があります。豚肉やお酒はハラームとして有名ですが、豚肉由来のものやお酒由来の食品原料なども「ハラーム」の対象となります。
彼らの基準は非常に厳しく、日本人には馴染みが薄いですが、世界人口の3割近い16億人を超えるイスラム教徒を今後取り込んでいくためには、ハラールへの理解が必要となっています。
アジアでも、イスラム教徒が全人口の9割近くを占めるインドネシアや人口の6割を占めるマレーシアでは、中間所得層の割合が増えてきており、肌につける化粧品についても戒律に則った成分が使われているかどうかを気にする傾向が強まっていることから、近年、化粧品業界でも、「ハラール」という概念が注目を集めるようになりました。
●ハラール認証化粧品の動向
化粧品業界では、ここ数年、戒律で定められた成分を使って化粧品を製造していることを証明するためにハラール認証を取得する動きが出始めています。インドネシアではハラール化粧品専門ブランド「Wardah」が売上規模こそ小さいものの急成長していることから、ハラール認証に戦略的価値が生まれ始めています。
インドネシアでは、ローカルメーカーが先行して認証を取得し始めた後、花王などがハラール認証化粧品を発売しています。この動きはマレーシアも同様であり、2012年には資生堂が「Za」でマレーシアの認証機関からハラール認証を取得、マレーシアの一部店舗でハラール認証を取得した「Za」の試験販売を開始しています。
資生堂は、ベトナムの自社工場がハラール認証の審査に合格しており、今後はインドネシアでの販売も視野に入れています。世界には数十のハラール認証機関がありますが、インドネシアの認証機関「LPPOM-MUI」、もしくはマレーシアの認証機関「JAKIM」で認証を受けるケースが主流です。
浅井潤司
(株)矢野経済研究所主席研究員
2000年に矢野経済研究所に入社後、主にビューティー・リラクゼーション業界の市場調査、分析業務を担当。また、調査・分析業務だけでなく、中国市場進出支援、販路開拓支援、新規事業支援、地域振興・産業振興支援などのコンサルティング業務も手がけている。
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