第35回 「伝える」ことに専念するのではなく「伝わる」工夫を

【週刊粧業2017年11月27日号11面にて掲載】

 最近、弊社の美容関心層を対象にした会員制サイト「コスメラウンジ」では、ブランドの発表会や体感会を運営する機会が増えました。

 その中でも特に、新製品の発売直後にブランドのマーケティング・広報担当者から直接、商品のレクチャーを受ける「キャラバンラウンジ」というセミナー形式のイベントが、会員から好評を博しています。

 一番人気は体験型のワークショップスタイルです。もちろん、ふだんは接することのない、ブランド本部の広報担当者の話を聞けるのは貴重な機会なので、話を聴講するだけの「座学スタイル」も参加者にとっては十分魅力的なのですが、五感をフル稼働させる「体験型」にはさらに特別感を抱くようです。

 ワークショップのスタイルは各社様々ですが、オーソドックスなのはメークの体験です。実際にブランドの製品を使ってメークを仕上げるのはもちろん、ただメークをするだけでなく「シミ、くすみ、シワなどの欠点を上手にカバーできるメーク」など、ターゲット層に合ったテーマにすると、より反響があるようです。

 あるヘアケアメーカーでは、参加者の毛髪をその場で診断するカウンセリングに関心が集まり、後日店頭での体験予約につながったそうです。

 また、ナチュラルブランドの場合はオーガニック認証など、どうしてもブランド理論的な話が中心となって「お勉強スタイル」になりがちですが、自分に合った香りの見つけ方の体験なども好評でした。

 やはり「自分事」体験のワークショップに参加者はインパクトを覚えるようです。体感会場が「売場でない」からこそ、「購入」を気にせず、体験・体感に没頭できるので、先入観のないまっさらな気持ちでそのブランドに接することができます。

 参加者は自身の体験について周囲に共感を求めることにも積極的ですので、発信や拡散といったクチコミが威力を発揮するという相乗効果も生まれます。

 こうした施策を通じて言えることは、一般顧客層を対象にした体感会は、ブランド側だけが「伝えたいこと」を伝えていては「伝わらない」ということです。

 また、体験会、体感会はブランド側で準備した商品(現品)などの「お土産」がついてくることも、参加者にとって大きな特典です。SNS投稿による拡散も大きく期待できるので機会はおおいに活用すべきですが、参加者が「お得体験」のみに価値を感じてしまうとブランド・商品の本質的な魅力が伝わらないこともあるので、「モノ」よりも「コト」体験に価値を見出してくれる参加者や一般顧客層を見極めていくステップも、重要となってくるのではないでしょうか。
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松下令子

美容専門PR・販促支援会社 (株)DSプロモーション 代表取締役

「顧客と一緒に汗を流す」をモットーにPR・販促事業を展開。 医療機関テスター設置活動など独自の販促支援事業が好評。 「当連載では、私たちが業務を通じて得た“今日から試せる”  PR・販促施策のヒントをあらゆる角度から提案します」

http://www.ds-p.net/

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