【週刊粧業2020年10月26日号6面にて掲載】
PALTACは2019年11月、同社17番目となる最大規模の大型物流センター「RDC埼玉」(埼玉県北葛飾郡杉戸町)を本格稼働させた。
AIやロボット技術などの最新テクノロジーを随所に導入した次世代型の新物流モデルである。敷地面積2万坪、延床面積1万3000坪の規模で、総投資額は230億円、年間出荷能力は1200億円を見込んでいる。
なお同社の2020年3月期の売上高は中期目標である1兆円を突破した。
PALTACのRDCネットワーク構築に最も尽力したのは三木田國夫会長である。1998年12月、副社長兼営業本部長から社長に昇格すると、翌年の3月、RDCの第1号となる「RDC近畿」(大阪府泉佐野市)を開設している。
それ以降同社は、今日まで総額1000億円を超える設備投資を断行して全国にRDCネットワークを構築してきた。
2010年6月に会長兼CEOに就任した三木田会長は、2012年新年号の私とのインタビューで12年間に及んだ社長時代を振り返って次のように語っている。
「私が社長時代に開設したRDCは全国で15カ所、得意先の専用センター3カ所を含めると18カ所に達します。投資総額は累計で950億円になります。これに年末までに完成させる『RDC中部』(愛知県春日井市)を含めると1000億円は優に超えます。業界からは『借金コンクリート』とよく言われたものです(笑い)」
だがこうした巨額投資によるRDC網がPALTACの日用品卸業界での地位を確立させた。それは販管費比率の改善に明瞭に示されている。
このインタビュー当時は9%台だった同社の販管費比率は年々低下して、2020年3月期上期決算では何と5.14%にまで改善されているのだ。ちなみに同上期の荒利益率は7.67%、営業利益率は2.53%となっている。
彼は一見強面だが、私とは同じ昭和18年生まれということもあり気が合った。うちのベテラン社員が机の上に三木田さんの写真を額に入れて飾っていたので聞いてみると、「毎日緊張して仕事ができるからです」と言う。笑ってしまった。
「私が社長に就任して以来これまで、何かこの会社に貢献できたものがあったとすれば、大幅に数字を伸ばしたとは言えませんが、毎年着実に生産性を向上させたことです。業績も、1期だけ増収減益だったことを除けば、これまで増収増益を続けてきました。売上がまだ2000億円規模だった当時、RDC近畿とRDC東海という大型2センターを新設したことで減益となった年が唯一の例外でした。しかし、その投資がなければ当社の今日はありませんでした」
あまり知られていないことだが、同社はこうした物流センターの建設では、ゼネコンを一切使っていない。同社の担当者がチームを組んで、仕様書発注のような形で建設にあたっている。
このため建築コストも詳細に把握できており、結果としてコストダウンに繋がっている。
今後の中期的な経営課題について三木田会長は、「営業面では、現場に近いところに責任と権限を委譲し、経営判断のスピードを上げていきます。このためには、組織をピラミッド型ではなく、即断即決できるように、できる限り階層を簡素にしています。またマネジャー職、リーダー職を対象とした教育研修にもさらに力を入れています」と語っている。
(次回は、サミット 荒井伸也 元社長)