【化粧品業界】市場規模・動向・トレンド・課題・将来性・今後の展望を解説

こちらのコーナーでは、【化粧品業界】市場規模・動向・トレンド・課題・将来性・今後の展望について解説していきます。

化粧品業界は、化粧品の開発・製造・販売を行う企業や人々の総称で、スキンケア化粧品やメイクアップ化粧品、フレグランスなど、幅広い種類の商品を取り扱っています。

2019年までは伸びゆくインバウンド需要で拡大基調にありましたが、コロナ禍でメイク需要が落ち込み、市場も大きなダメージを受けました。

しかしながら、2021年をボトムとして回復傾向にあり、2023年度は2兆4,500億円(矢野経済研究所調査)まで成長しています。


日本の化粧品市場規模

矢野経済研究所によると、2023年度以降は新型コロナウイルスによる行動面の制限や消費者の買い控えなど経済面への影響も落ち着きをみせ、国内需要は回復基調を継続しているとみています。

また、原材料等のコスト高騰や製品の高付加価値化により単価向上が図られているほか、訪日観光客も徐々に増加していることでインバウンド需要も回復しているとみられ、2023年度の日本国内の化粧品市場規模(メーカー出荷金額ベース)を前年度比103.4%の2兆4,500億円と予測しています。


化粧品業界の動向・トレンド

化粧品業界は、2021年をボトムとして回復傾向にあり、新たな需要の取り込みに向けて6つの動きが進行しています。

1. クリーンビューティーとサステナビリティ

消費者の間で環境への配慮が高まっていることから、化粧品業界でもサステナビリティが重視されています。動物実験を行わない製品や、自然由来の成分を使った製品、再生可能な包装材を採用するブランドが増加しています。大手企業もこの動向に対応すべく、さまざまな取り組みを行っています。

2. パーソナライズドコスメの普及

個々の肌質やニーズに合わせたカスタマイズ化粧品の需要が高まっています。消費者のライフスタイルや肌質を分析し、それに基づいた化粧品を提供するサービスが増加しています。AIや肌診断技術を活用して、ユーザーのニーズに合った製品を提案する動きがみられます。

3. メンズコスメの市場拡大

男性の美容に対する意識が高まっており、メンズコスメ市場も成長しています。スキンケア、ヘアケア、さらにはメイクアップ製品も男性向けに開発されています。特に若年層の男性をターゲットにしたブランドや商品が注目を集めています。

4. デジタル体験とECの成長

コロナ禍をきっかけに、オンラインでの化粧品購入が急速に拡大しました。バーチャルメイクアップツールやAIを使った肌診断、オンラインカウンセリングなど、デジタル技術を活用した新しいショッピング体験が普及しています。特に日本の大手ブランドは、この分野での投資を強化しています。

5. 高機能スキンケア製品の人気

日本は高品質なスキンケア製品の開発で世界的に知られています。特に、エイジングケアや美白などの機能性が高いスキンケア製品が国内外で人気を集めています。日本製の化粧品は、技術力と効果の高さで信頼を得ています。

6. ジェンダーレス・ユニセックス製品の増加

ジェンダーにとらわれない美意識が広がる中で、ユニセックスコスメやジェンダーレスの美意識を反映した製品が増加しています。パッケージやマーケティングでも、性別にとらわれない表現が注目されています。

まとめ

これらの動向から、今後も化粧品業界は国内市場だけでなく、アジアを中心とした海外市場でも成長が期待されています。


化粧品業界の課題

化粧品業界は高品質な製品や技術力で世界的に評価されていますが、いくつかの課題にも直面しています。具体的な課題をいくつか紹介します。

1. 少子高齢化と国内市場の縮小

国内の少子高齢化は、多くの産業に影響を及ぼしており、化粧品業界も例外ではありません。特に若年層の人口が減少しているため、購買力のある消費者層が減り、国内市場の成長が鈍化しています。そのため、各企業は海外市場の開拓や、新たな消費者層(男性やシニア世代)をターゲットにした商品展開を積極的に進めています。

2. 国際競争の激化

日本の化粧品はアジアを中心に高い評価を得ていますが、韓国や中国などのアジア諸国からの競争が激化しています。特に韓国のK-Beautyブランドは、価格競争力とトレンド感で若い層を中心に人気を集めており、日本企業にとって競争力の維持が課題となっています。

3. デジタルシフトへの対応遅れ

デジタルマーケティングやEC(電子商取引)の重要性が増している一方で、日本企業のデジタル化の進展は欧米や韓国に比べて遅れを取っていると指摘されています。特に、オンライン上でのブランド展開やSNSを活用したマーケティング戦略の強化が求められています。

4. サステナビリティへの対応

近年、環境問題やエシカル消費への関心が高まる中、サステナビリティに配慮した製品開発や企業活動が求められています。特にパッケージのプラスチック削減や、自然由来の成分を使用した製品の開発、動物実験を行わない製品の導入が急務です。これに対応しないと、特に若年層や欧米市場でのブランドイメージに悪影響を与える可能性があります。

5. イノベーションのスピード

化粧品業界は技術革新が重要ですが、研究開発にはコストと時間がかかります。特にエイジングケアや美白など高機能スキンケア分野では、企業間の競争が激しく、次世代技術や製品を迅速に市場に投入する能力が求められています。さらに、製品の効果や安全性に対する消費者の目が厳しくなっているため、これに応えるための確かな研究データと透明性も必要です。

6. 多様性とインクルージョンの不足

多様な肌タイプやニーズに対応する製品展開が課題です。特にグローバル市場をターゲットにする場合、各国の消費者の肌質や文化に対応した商品開発が必要です。国内でも、ジェンダーレスな製品や、多様な肌の色に対応したファンデーションなど、より広範な消費者層にアプローチするための多様性が求められています。

7. 規制と安全性への対応

化粧品業界では、各国で異なる規制に適合することが必要です。例えば、日本の化粧品が海外に進出する際、各国の法規制(成分の制限や表示義務など)に対応するために多大な労力とコストがかかります。これに加え、消費者の安全性への意識が高まっているため、安全基準の厳守がますます重要視されています。

まとめ

これらの課題を克服するためには、国内市場の変化に迅速に対応しながら、国際競争力を高める戦略的な展開が必要です。

デジタル技術やサステナビリティへの対応を強化することで、消費者のニーズに応えつつ、業界全体の成長を促すことが求められています。


化粧品業界の今後・将来性

世界的な競争の中でも高品質と革新性で強い存在感を持ち続けている日本の化粧品業界。今後の展望や将来性について解説していきます。

1. アジア市場へのさらなる進出

日本の化粧品は、特に中国や東南アジアなどアジア市場で高い需要を獲得しています。今後も、アジア市場は日本企業にとって重要な成長エリアとなるでしょう。中でも、中国市場は依然として大規模で購買力が強いため、日本のブランドは引き続き積極的に進出を図ると予想されます。現地の文化や美容トレンドに合わせた製品開発やマーケティング戦略がカギとなります。

2. デジタルトランスフォーメーションの加速

今後もEC(電子商取引)やSNSを活用したデジタルマーケティングが重要な成長戦略となるでしょう。バーチャル試着やAR(拡張現実)を活用したメイクシミュレーションなど、デジタル技術を駆使して消費者との接点を強化することが求められます。また、AIを活用したパーソナライズドスキンケア提案や、オンラインカウンセリングも今後の注力分野となるでしょう。

3. サステナビリティへのさらなる取り組み

エコフレンドリーな製品やパッケージングに対する消費者の関心が高まり続けているため、環境に配慮した製品開発が業界全体で重視されます。自然由来の成分を使用した化粧品や、リサイクル可能な容器、動物実験を行わないクリーンビューティーブランドの発展が予想されます。大手ブランドだけでなく、新興ブランドもこの分野で独自性を発揮する可能性があります。

4. メンズコスメ市場の拡大

日本でも男性の美容意識が急速に高まりつつあり、メンズコスメ市場が拡大しています。今後は、より多様な男性向けのスキンケアやメイクアップ製品が登場し、企業は男性消費者をターゲットにしたマーケティングを強化していくでしょう。特に20代から30代の若い世代を中心に、この市場の成長が期待されます。

5. ジェンダーレス・インクルージョンの推進

性別にとらわれない「ジェンダーレスコスメ」や、肌の色やタイプに対応した「インクルーシブコスメ」が注目されています。これにより、性別や人種、年齢を問わず、誰もが使いやすい化粧品の開発が進むでしょう。特に多様な肌色に対応したファンデーションなど、消費者の多様なニーズに応える製品が求められています。

6. AIとビッグデータによるパーソナライゼーションの深化

AIやビッグデータの活用により、消費者の個々のニーズや肌タイプに合わせたパーソナライズドコスメが今後さらに進化します。肌の状態や季節に応じて最適な製品を提案するサービスや、購入履歴や好みに基づいたカスタマイズ製品が一般化するでしょう。AIを活用した分析によって、消費者一人ひとりに合わせた提案が実現し、顧客満足度の向上につながります。

7. 高機能化粧品とエイジングケア市場の成長

高齢化が進む日本では、エイジングケアやアンチエイジング製品の需要が引き続き増加する見込みです。日本の消費者は高品質で効果的なスキンケアを求めるため、技術革新によってより効果的な成分や製品が開発されるでしょう。特に、再生医療技術やバイオテクノロジーを活用した最先端のエイジングケア製品が注目されています。

8. 海外ブランドとの競争

韓国や中国、欧米ブランドとの競争は引き続き激しくなるでしょう。特に、韓国のK-Beautyブランドは、トレンドを反映した手頃な価格の製品で若年層に強い人気があります。日本ブランドが独自の強みを生かしながら、迅速にトレンドに対応しつつも、差別化を図る戦略が求められます。

まとめ

化粧品業界は、これらの戦略をうまく活かしつつ、技術革新と消費者ニーズの変化に敏感に対応することで、今後も国内外で競争力を維持し成長していくことが期待されます。

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今回取材した5社(矢野経済研究所、富士経済、TPCマーケティングリサーチ、True Data、インテージ)の分析をまとめると、2018年度の国内化粧品市場も引き続き、訪日外国人観光客数の増加に比例してインバウンド需要が好調なことから、前年を上回ったとの見方で概ね一致している。2019年は、中国EC法(中華人民共和国電子商取引法)の影響で、転売業者による大量購入が急速に減少したことから、市場の拡大幅が前年から縮小するものと推測される。

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今回取材した6社(矢野経済研究所、富士経済、TPCマーケティングリサーチ、インテージ、True Data、ユーロモニターインターナショナル)の分析をまとめると、2017年の化粧品市場も引き続き、小売・卸・メーカーが一体となって訪日観光客向けの売場づくりや多言語対応カウンセリング、ギフトセットの販売などを強化したことでインバウンド需要の取り込みが進み、トータルではプラスで着地したとの見方で概ね一致している。今後は東京五輪に向けて訪日観光客のさらなる増加が予想され、インバウンド需要の継続的な獲得が進むとともに、日本で化粧品を購入した外国人に対するアウトバウンド需要の獲得も進むものとみられる。

【週刊粧業】シンクタンクが分析する2018年の国内化粧品市場

今回取材した6社(矢野経済研究所、富士経済、TPCマーケティングリサーチ、インテージ、True Data、ユーロモニターインターナショナル)の分析をまとめると、2016年の化粧品市場は内需が横ばいで推移する一方、小売・卸・メーカーが一体となって訪日観光客を意識した売場づくりや多言語対応カウンセリング、ギフトセットの販売などを強化するなど、インバウンド需要の取り込みで内需のマイナスをカバーしたことで、トータルではプラスで着地したとの見方で概ね一致している。各社は今後の化粧品市場について、東京五輪に向けて訪日観光客のさらなる増加が予想されることから、インバウンド需要の継続的な獲得が進み、拡大傾向が続くと推測している。

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今回取材した6社(矢野経済研究所、富士経済、ユーロモニター・インターナショナル、総合企画センター大阪、インテージ、新社会システム総合研究所)の分析をまとめると、個人消費を中心に内需の低迷が続く中、2015年の化粧品市場はインバウンド消費がそれをカバーしたことでスキンケアやメークアップなどのカテゴリーがいずれも好調に推移し、市場トータルではプラスの着地となったとみていることがわかった。今年の動向については、ここ数年急速に拡大し続けてきたインバウンド消費の鈍化を指摘する意見が多かったものの、化粧品が実際に商品を手に取って香りやテクスチャーを楽しむ嗜好性の高い商材であることや、依然として訪日外国人観光客が増加の一途を辿っていることなどを背景に、今後も市場で一定の影響をもたらすとの意見で各社が一致していた。

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今回取材した各企業・団体(富士経済、矢野経済研究所、ユーロモニター・インターナショナル、総合企画センター大阪、インテージ、船井総合研究所、日本能率協会総合研究所)の分析をまとめると、2014年の国内化粧品市場は、上期が消費増税にともなう駆け込み需要の反動で買い控えが顕著となり市場が低迷したものの、下期は消費マインドが戻ってきたことに加え、昨年10月の免税対象品目拡大を背景にした「インバウンド消費」が活況を呈し、通期でプラスかほぼ横ばいの微増という点で大方一致していた。今年の動向については、過去最高を記録した昨年の年間訪日外国人観光客数を9月末時点ですでに上回るなど、インバウンド消費が引き続き市場に大きな影響をもたらしている。カテゴリーでは、特に1000円台の大容量タイプのフェイスマスクが大きな伸びを見せているという。

【週刊粧業】シンクタンクが分析する2015年の国内化粧品市場

今回取材した5社(富士経済、矢野経済研究所、ユーロモニター・インターナショナル、インテージ、船井総合研究所)の分析をまとめると、2013年の国内化粧品市場は美白化粧品による白斑問題の影響が大きく懸念されたものの、百貨店ブランドを中心とする高価格帯美容液のほか、CCクリームなどの新たな機能性を持ったベースメークといった美白以外のカテゴリーが好調に推移し、市場トータルではそれほど大きな落ち込みがないと見ていることがわかった。

【週刊粧業】シンクタンクが分析する2014年の国内化粧品市場

今回取材した5社(インテージ、矢野経済研究所、船井総合研究所、富士経済、ユーロモニター・インターナショナル)の分析をまとめると、やはりオールインワンやアンチエイジングといった現在好調な市場が引き続き伸長すると見ていることがわかった。その一方で、現在、オールインワンやアンチエイジングに次ぐ新しい価値が誕生しておらず、2014年の化粧品市場も大幅な増減は見られないという。

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