100%植物由来のグリセリンから脂肪酸エステルなどの各種誘導体までを一貫生産する阪本薬品工業では、保湿剤としてジグリセリン・ポリグリセリン、また乳化剤や油剤としてポリグリセリン脂肪酸エステルを中心とした化粧品原料を製造・販売している。
植物由来のグリセリンを原料としたジグリセリンとポリグリセリンは、べたつきを抑えて保湿力の高いスキンケア化粧品の設計が可能だ。また、ポリグリセリンの重合度により多彩な使用感を実現できる。
保湿剤の中でも特に、0.5%の少量配合でグリセリンのべたつきを抑制し、配合量によってさっぱり系からしっとり系・高保湿まで幅広い使用感をもたらす「ジグリセリン801(ジグリセリン)」と、高配合してもべたつかずエモリエント感を付与する「PGL-S(ポリグリセリン-3)」、0.5~3%の少量配合でリッチ感やコク感、ハリ感(被膜感)を付与する「ポリグリセリン#750(ポリグリセリン-10)」の3原料への引き合いが増えているという。
「高保湿化粧料を設計する際、多価アルコールを高配合するケースは多いが、配合量の増加と比例してべたつき感が増すことがこれまで大きな課題となっていた。それに対し、当社の保湿剤はべたつきを抑制しながら高保湿を実現し、使用感の調整を可能にした。また、石油系原料を使用しないPEG(ポリエチレングリコール)フリーで、サステナブルな処方開発を実現する点も評価されている。スキンケアだけでなく、インバスのトリートメントでも販売が好調だ」(同社)
ジグリセリン・ポリグリセリンと同様に植物由来のグリセリンを原料とし、高度に精製したポリグリセリンと脂肪酸をエステル化したポリグリセリン脂肪酸エステル(SYグリスター/Sフェイス)は、ポリグリセリンの重合度や脂肪酸の種類、エステル化度の組み合わせによって、親水性から親油性まで幅広いHLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance)に対応した製品を取り揃えている。環境や人にも優しく、使用感に優れていることから、スキンケアやメークアップまで幅広い化粧料で採用されている。
スキンケアでは、乳化や可溶化、分散、親油性の油剤など幅広い機能や特長を有するポリグリセリン脂肪酸エステルの引き合いが増えているという。
可溶化剤では、RSPO・COSMOSの各認証と中文INCIを有し、外原規に適合する「Sフェイス 10G-IS」「Sフェイス 10G-L」と、今年4月から新たに提案を開始した「Sフェイス 10G-M」の3原料の採用が広がっている。
Sフェイス 10G-ISは、スクワランをはじめ幅広い油溶性物質に対して可溶化性能を持ち、クレンジングオイルに配合するとメークとの馴染みや水洗性が向上し、クレンジング後の残油感が少ないのが特長だ。
Sフェイス 10G-Lは、香料や精油に対して高い可溶化性能を示し、化粧水やクレンジングローションに配合した精油を透明に可溶化する。
Sフェイス 10G-Mは、Sフェイス 10G-ISに近い可溶化性能を有しながらも水との親和性が高く、スクワランなど非極性の油剤に対する可溶化性能にも優れている。また、汎用的なPEG系可溶化剤と比較してべたつきや被膜感が少なく、柔らかな感触が得られるという。
乳化剤(O/W)では、RSPO・COSMOSの各認証と中文INCIを有し、外原規に適合する「SフェイスS-1001P」「SフェイスM-1001」の2原料が安定した受注を獲得している。
「PEGフリーをコンセプトにしたナチュラル・オーガニック化粧品が近年、増加傾向にある。このため、石油系原料を使用しない天然系のポリグリセリン脂肪酸エステルが評価され、保湿剤と同様、乳化剤と可溶化剤においても市場の流れに比例する形で好調な売上につながっている」(同社)
メークアップのカテゴリーでは、イソステアリン酸エステル「Sフェイス IS-201P」と、縮合リシノール酸エステル「SYグリスター CRS-75」を組み合わせたW/O乳化剤が、ノンシリコンやPEGフリーをコンセプトにしたファンデーションやサンケアを中心に採用が広がっている。この2原料を組み合わせることで、シリコーン油や炭化水素油、混合油の各種油剤を幅広く乳化し、いずれも安定したW/Oエマルションの調製を可能にする。図では、各種油剤の具体的な乳化性能をデータで示している。
メークアップではこのほか、無機微粒子粉体の分散剤として、二塩基酸エステル「Sフェイス SCIS‐101」と、縮合リシノール酸エステル「SYグリスター CRS-75」の引き合いも増えているという。
「液状油からペースト油まで幅広い商品設計ができる点がポリグリセリン脂肪酸エステルの特長であり、用途としてもスキンケアからメークアップまで多様な製品に使用できるため、特にヨーロッパなど海外から非常に多くの問い合わせをいただいている状況だ。また、最近では生分解性に優れた原料への需要が高まっていることもあり、そうしたトレンドに合致した原料として植物由来のグリセリンをベースとし、環境に配慮した化粧品の開発が可能な当社独自のポリグリセリン・ポリグリセリン脂肪酸エステルへの引き合いが高まっている」(同社)
この記事はC&T 2024年9月17日号 30ページ 掲載
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