この連載では、BCP構築のポイントについて、ファシリティの視点を踏まえて解説しています。
今回は、減災対策の進め方について地震リスクを例に解説します。
東日本大震災では、構造体に大きな損傷がなくとも、天井やパーティションといった「非構造部材」の落下・転倒が多く発生したのが特徴的でした。その原因の1つとして地震動の揺れの長さが考えられます。
その他にも以下のような被災事例が報告されています。
●OAフロアのパネルめくれ上がりによる機器類の転倒
●生産装置固定金物のせん断破壊や引き抜きによる、装置の移動・転倒
●長周期地震動による、自動倉庫の積荷の落下
このように、工場の生産機能の継続に着目した場合、生産装置、天井や壁といった非構造部材、建築設備、さらに建物以外の構内にあるユーティリティなど、重要業務に必須の重要ファシリティが何かを見極め、そのすべてに目を配り減災対策を施すことが必要になります。
減災対策の進め方~工場の地震対策の例~
〈最初に…生産工程の把握/重要ファシリティの抽出・分析〉
最初に生産工程を詳細に分解します。全ての工程の最新情報を各工程のチームリーダーやICT担当者など複数の部署にヒアリングしながらまとめることで、重要ファシリティを漏れなく洗い出し、それが停止した場合の重要業務への影響を分析します。
〈次に…調査チェックリストの作成〉
この分析結果を参考にしながら、チェックリストを作成し重要ファシリティの調査個所を明らかにします。作成にあたっては「重要ファシリティが機能しないという」結果からその原因を紐解く方法と、「地震が発生した」といったリスク要因が発生した場合に重要ファシリティがどのように被災するかといったように、「結果」と「原因」の両面から両事象から検討すると、漏れのないチェック箇所の洗い出しが可能です。
〈次に…現地調査とリスク評価〉
作成したチェックリストをベースに、重要ファシリティに対して現地調査を実施しリスク評価を行います。
例えばある工程で使用される毒物や劇物の保管物が、地震により漏洩するリスクが高い場合、その事業への影響度や復旧難易度が低くても、従業員の人命に多大な影響を与えるならば、真っ先に対策を施すことになります。
リスク評価は、生産部門の責任者、各工程のリーダー、協力業者といった関係者間でディスカッションを行って精緻に評価し情報共有します。このようなディスカッションは重要です。BCPを構築・利用・運用する関係者間で情報を共有し、経営者の声を現場に浸透させ、現場の生の声をBCPに生かす仕組みを構築する事で、関係者の参加意識とモチベーションを向上させることができます。
次回は、具体的な減災対策の方法について解説します。
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