2011年下期のインバスヘアケア市場は、金額、数量、単価とも前年同期比100であった。この数字だけをみると、ほぼ横ばいでむしろ健闘していると映るが、価格帯別では、700円以上(前年比107)、400~698円(同98)、398円以下(同99~100)となっており、高価格帯だけが伸び、中~低価格帯は単価がダウンしている。
この市場のリーディングカンパニーである花王は、高価格帯の伸長が市場拡大に寄与していない現状に「決して健全とは言えない」と懸念を抱いており、市場活性化に向け、№1企業らしい取り組みを進めようとしている。
そこで今回は、同社のヘアケア事業の実務責任者である、塗谷弘太郎ビューティケア事業ユニットプレミアム・ヘアケア事業グループ部長に、今後の戦略などについて話を伺った。
――最近の市場動向について教えて下さい。
塗谷 2011年下期のヘアケア市場は、金額100、数量100、平均単価100で推移しており、それだけを見ると何の変哲もない数字です。しかし、詳細を見ていくと大きな変化が起こっています。
価格帯別では、700円以上(前年比107)、400~698円(同98)、398円以下(同99~100)となっています。ノンシリコン系の1品単価の高いシャンプーが登場しましたので、本来であれば市場は拡大しないといけませんが、問題はこの分が上乗せされていないのが現状であり、このことは正直申し上げて業界にとって由々しき事態だと思います。
高価格帯シャンプーの販売が伸びても、中価格帯以下のシャンプーの単価が下がっている結果、市場全体としては、金額、数量、単価とも前年並みといった状況ですので、そのあたりはとても懸念しています。
ヘアケア市場の主要4社(花王、P&G、ユニリーバ、資生堂)の動向を見ると、2007年のピーク時にはシェア率が75%まで増えましたが、2011年末の段階で7割を切ってしまっています。主な要因は、ノンシリコン系高価格帯シャンプーの拡大にあります。
牽引役となっているジャパンゲートウェイを見ても、2年前は2~3%程度のシェアでしたが、2011年末には全チャネルで8%、ドラッグストアルートに限ると10%までシェアを拡大しています。
――ノンシリコン系高価格帯シャンプーの成長性、今後の展望についてはどのように捉えていますか。
塗谷 ノンシリコン系高価格帯シャンプーを支持する層の一部で、「頭皮がつまる」とか、「パーマ、カラーがかかりにくい」といった話がありましたので、花王ではこれへの対処として、現在発売しているシャンプーに含まれるシリコンが本当に体に悪影響を及ぼすものなのか、全て実験を行い、確認しました。
「毛穴をふさぐ」という点については、シリコンの特性上無理だとわかりました。水で流すと水滴になってしまって膜にはならないので、ふさごうとしてもふさげませんでした。
次に、パーマやカラーもかけましたが、現在発売しているシャンプーに含まれている程度の量であれば、全く影響しないことも実証されています。
ですので、花王としては、仕上がりのお好みに合わせたラインナップ展開で、さっぱりする仕上がりを好む方には、ノンシリコンの「メリット」「サクセス」を提供していますし、きしむのが嫌な方には、シリコンを配合した「アジエンス」などを提供しています。
また、安全性については、ホームページ上で実験結果と合わせてきっちりと伝えています。
花王では、ノンシリコン系高価格帯シャンプーについての調査を約500名の女性に実施しました。ノンシリコンシャンプーの認知度は約2割で、そのうちの半数の方で購入経験がありました。しかもこの1年以内で購入した方がほとんどで、うち3割が使用を中止していました。
また、使用者の約6割がマスブランドのシャンプーを併用しています。商品自体への評価はそれなりに高く、潜在的なユーザーもまだ存在すると考えた場合、現状(8%)よりもあと2Pは拡大し、全チャネルで10%程度になるのではないかと見込んでいます。そこら辺で一巡するのではないでしょうか。
今後、ノンシリコンだけで言うとマスブランドにも幾つも存在することが次第に理解され、ノンシリコン系高価格帯ブランドのトリートメント・リンスにはシリコンが入っていることなども明らかになってくると、3~4割程度の方は離脱すると思いますが、残りの6~7割の方はパフォーマンスが気に入って購入し続けるのではないかと思います。花王としては、むしろそこは重要視しており、ここには何か商品提案をしていかなければならないと思っています。
ブームが3年と仮定すると、その後に本当の意味での価値が問われてくると思います。単に軽い仕上がりだけではきっと消滅していくでしょう。
これからは、髪の毛に何をもたらしてくれるのかといったところが勝負になってくると思いますので、花王としては、現状でノンシリコン系高価格帯シャンプーが一定の支持を受けているという現実をしっかりと直視しつつ、その後を見据えた価値提案を行っていくべきではないかと考えています。
シャンプーに求められている究極のニーズとは、仕上がりはナチュラルで、傷みだけをケアするものだと考えるなら、現在のブームはよく理解できます。実際に、シャンプーには軽めなもの、ダメージ部分にだけトリートメントを使用する人は少なくありません。
花王としては、シリコンの有無で争うのではなく、そうした裏側のニーズをしっかり把握して、半歩先を行く提案を心掛けることこそ肝要だと思っています。
今後は、マスブランドの「メリット」と「エッセンシャル」を二枚看板として展開しつつ、「アジエンス」と「セグレタ」を独自ブランドとして育成していくことに集中していきます。
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この記事は週刊粧業 2012年3月26日号 8ページ 掲載
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