週刊粧業 2014年2月24日号 1ページ
カンタンに言うと
2014年1月6日、例年どおり1000名超の人出に沸いた東化工など3団体が共催した業界連合新年会で、大手の原料商社社長が人波を見やって言った。「OEM企業が多くなっている」――。業界の趨勢を知りつくしたベテラン経営者の観察眼と言葉は、ある一つの実態を的確に捉えた発言としてその場に余韻を残した。
週刊粧業は春の注力特集として「OEMトップインタビュー」(全24社)に取り組むと同時に、モノづくりの前線から声を吸い上げた「アンケート調査」(全37社)を実施し、集計結果を発表している。メーカーや本舗に見えづらいOEM企業の台所事情を、本紙から業界へ発信したい狙いがある。
相当に進む製造外部委託
本舗は「販売に全力」へ
一部の大手メーカーのように自社の製造ラインを構える製販一体型の本舗は少数派である以上、市場に参入している化粧品会社の多くはOEMの力を借りて事業を展開していると見て間違いがない。実際、上場企業のドクターシーラボでさえ自前の製造インフラは持っていない。
こうしたことから、本年のアンケート調査結果からはひとまず、大手~中小を問わず化粧品会社のモノづくりは外部委託が進んでいるという仮説に行き着くことができる。また、現在もやまない異業種参入がOEM各社の業績を盛り立てている点も見逃すことはできない。
フロントランナーとして業界を引っ張る日本コルマーは、今期に10期連続の増収を射程にし、2015年3月期には売上高250億円を達成したいと公表している。
最大手の企業動向は、受託製造のマーケットを知るうえで重要な指標といえる。また、同社の神崎友次社長が提唱するメーカーは「製品をアウトソーシングしながら資源を販売強化に集中すべき」が既に浸透していると考えれば、先のアンケート結果は膝を打つものとなる。
この点、日本色材工業研究所の奥村浩士社長もメーカー各社の選択肢を「今後は製販の分離、つまりアウトソーシングが加速することが予想される」と判断。大型投資でチャンスに備えている。
さらに、勢いづく「元気な中堅」の企業動向も業界全体の活発な流れに拍車をかけている。
拡大路線を緩める気配が見えない東洋新薬は、2014年3月期の化粧品事業売上高を対前年比200%に押し上げる見通しであることを明らかにしている。
メーク品の技術・開発力で定評のあるアサヌマコーポレーションは、本丸が生産力の向上などを背景に上半期売上高で10%成長を果たすとともに、中国法人も経営力が高まったことで今夏にグループ総売上高で初の100億億円達成を射程内におさめている。
このほか、ヘアケアの分野で知名度が上がってきた近代化学は、2013年度実績を前年同期比17%増の9億1000万円として大台超えに片手をかけている。
企業の歴史的背景に関連して業容を競おうとしない一群が、持ち味をピリッと利かせた差異化ポイントを打ち出すことで事業に特徴づけをする傾向が強まっている。
新しい試みが話題を集めるケースの多いサティス製薬は、作って納めた製品の消化促進をはかるため、自前のコールセンターを構えて顧客企業の販売支援を行うという奇策を用意している。
また、メーカー・本舗が海外進出を目論む際に頭痛のタネとなる販路確保について、フェイスラボは中国国内のインターネット通販におけるプラットフォーム提供の形でモールの活用体系を構築した。代金決算までカバーする仕組みは、ネット通販が盛り上がる当地で引き合いを集めそうだ。
「売り」の側面支援という視点では、シーエスラボもOEMの守備範囲を飛び出す構えで新しい発信を行っている。本来、末端から離れた事業者が雇用する必要のなかったマーケッターを迎え入れ、開発した商品の売り方で情報提供を行う姿勢を強みにしている。
出揃った感のある企業特性
生かすも殺すも周知が鍵に
今回の特集では有力各社の一部が業績を開示することで事業の進捗を明らかにしたことに加え、各社各様に凝らした工夫で企業によって異なる特性を引き出したほか、それらが複合して向かう目先の構想に触れることも部分的に叶った。
一方で、マスへ露出するメーカー・本舗とは立ち位置の違いがあり、多くが「黒衣」を標榜するOEM企業にあってはセースルポイントを周知徹底する手法が見えない。
そうした中、「展示会の出展で新規採用が増えている」と成功例を示したシーエスラボや、「化粧品開発展などの展示会で、講演を継続していく」と手の内を明かしたセントラル・コーポレーションのほか、古参のヱスケー石鹸も展示会に注ぐ関心度合いで「積極的に出展」と歩調が揃った。
ここに、リード エグジビション ジャパンが開示している化粧品開発展の出展社データがある。
属性分類「OEM企業」の出展社数は開催初年度だった2010年の39社に対し、3カ年を経た2013年は倍増に近い76社を数えたほか、2014年(開催日程=10月20~22日)の見込みについてリード社は現状の感触から105社に達すると公表している。
同業者による露出と提案が一定のボリュームを形成した際、そこには競い合いの構図が強まると同時に、業界の総合力が醸すスケールメリットに光が増すことは間違いなさそうだ。
※写真は、『化粧品開発展』における商談の様子。
この記事は週刊粧業 2014年2月24日号 1ページ 掲載
■特集/OEMトップインタビュー ◎日本コルマー~生産力を増強し、見据えるは売上高300億円の早期達成 ◎日本色材工業研究所~国内外の受注増へ追い風、「つくば工場」が3月稼働へ ◎東洋ビューティ~経験積んだ社員の層に厚み、持続的に成長できるモデルへ ◎トキワ~持続的な革新に向け開発にギア、個別提案を強化し欧米での売上拡大 ◎コスメサイエンス~「第2の創業」が本格的にスタートへ、新規開拓倍増へ...
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