花王、内臓脂肪と腸内細菌の関係について研究

粧業日報 2019年11月1日号 2ページ

カンタンに言うと

  • 内臓脂肪面積が小さい人はブラウティア菌が多いことを発見
花王、内臓脂肪と腸内細菌の関係について研究
 花王と弘前大学、東京大学による研究グループは、内臓脂肪と腸内細菌の関係を性別による影響も含めて検討した結果、性別に関わらず、腸内細菌の一種のブラウティア菌が内臓脂肪面積と関係しており、内臓脂肪面積が小さい人は腸内のブラウティア菌が多いことを発見した。

 この成果は、花王ヘルスケア研究所、弘前大学大学院医学研究科 中路重之特任教授、東京大学医科学研究所 井元清哉教授の研究チームによる、弘前大学COIにおける「岩木健康増進プロジェクト」の健康ビッグデータを用いた共同研究によるもので、研究内容については、「npj Biofilms and Microbiomes」に掲載されるとともに、「European congress of obesity 2019」(2019年4月28日~2019年5月1日、グラスゴー)でも発表している。

 腸内細菌は、腸内フローラがさまざまな疾患に関与し、その代謝物は体のさまざまな器官に作用していることが知られており、肥満の指数であるBMIとの関係も報告され、特定の細菌群(ファーミキューテス門とバクテロイデス門)とBMIの関係が数多く議論されてきたが、被験者数も多くなく、その見解は一貫していなかった。

 一方、内臓脂肪面積は、生活習慣病との関係が深いとされるメタボリックシンドロームの診断基準であり、BMIより生活習慣病との相関が高いことが明らかになっていたことから、同社は長年にわたり内臓脂肪についての研究を重ねてきた。

 研究チームは、BMIと腸内細菌ファーミキューテス門、バクテロイデス門の関係についての過去の報告を精査し、結果に一貫性がないのは男女の性差の影響があるのではないかという仮説を立てた。そこで弘前大学COIにおける岩木健康増進プロジェクト健診データ(20~76才男女、n=1001)を用いてこの点を検証したところ、BMI、内臓脂肪面積ともに、ファーミキューテス門、バクテロイデス門の関係は男女で異なることを確認した。

 腸内細菌と内臓脂肪面積の関係をさらに詳しく調べるため、東京大学医科学研究所 井元清哉教授の研究チームの協力のもと、スーパーコンピューターを用いて岩木健康増進プロジェクト健診データ(20~76才男女、n=1001)を門よりも細かい分類である属で網羅的(305種)に分析した。その結果、性別に関係なく、内臓脂肪面積が小さい人ほどブラウティア菌の存在比が高いことを発見した。この傾向は、共分散分析で年齢、喫煙、飲酒などの要因の影響を取り除いても確認された。

 ブラウティア菌は、今回の対象者でも全腸内細菌の3~11%程度を占めるなど、人種に関わらず腸内に多く存在する細菌で、体内で肥満を解消するはたらきがある酪酸や酢酸をつくり出すほか、糖尿病、肝硬変、大腸がん、関節リウマチの患者で減少していることが報告されている。

 今後のさらなる検証によっては、ブラウティア菌がメタボリックシンドロームに関係する様々な疾患を改善する可能性や、肥満や糖尿病の新たな指標となる可能性も考えられるという。
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