中国化粧品市場のトレンド、ヤングリッチ&プリティー

週刊粧業 2019年10月28日号 4ページ

中国化粧品市場のトレンド、ヤングリッチ&プリティー
●Glossierの中国国内売上の推移(単位:人民元、資料:メジャーチャイナ)

1.化粧品の新たな需要者層=Z世代

 1995年から2005年の間に生まれた世代を指し、友人からの影響を強く受けている。購買欲が旺盛なことから、いわゆる「ヤングリッチ世代」とも呼ばれている。 

 カンター・グループ(Kantar Group)によると、2020年における中国のZ世代の人口は5億人に達すると見込まれており、彼らの購買力は世界中のZ世代の購買力の4割を占めると予想されている。



 IMFが見込んでいる2020年の中国のGDPは155ドル。そのうち、消費はおよそ5割を占めている。2020年における中国のZ世代の購買力(直接消費額)は4億ドルに達すると見込んでいる。

 それに加え、直接消費額を除いた家計消費額でのZ世代が支出する金額の割合は24%である(グローバル平均は15%)。従って中国の全体消費額でのZ世代の影響力は次第に大きくなると予想される。

2.Z世代の特徴「自分のルックスを意識」

 Z世代はいつでも自分の姿がオンライン上に投稿され得ることを認識しているため、ルックスへの関心が高い。また、身につける服や装飾のデザインがもつ意味にも敏感である。

 従って化粧品のデザイン及びパッケージングが購買に大きな影響を及ぼす。



3.Z世代の特徴「偏見を持っていない」

 自由、平等の価値を大事にするため、他人に対する判断を控える。新たなものに対する好奇心やコミュニケーションへの欲求が前の世代より高い。

 マッキンゼーの調査によると、Z世代は他人に対し、前の世代より開放的であるという。



4.Glossier=ヤングリッチをターゲットにしたブランドの成功事例

 ヤングリッチのこれらの特徴を充分活用し、効果的なマーケティングを展開したブランドであるGlossierは2014年にオンライン上で創業したブランドであり、諸段階を踏むべき既存の化粧方法から脱却し、「More skin, less makeup」をモットーにしている。

 シンプルなデザイン、飾り気のないパッケージングで「自分のテーブルに置いて写真を撮りたい」と思わせる外見が特長となっている。

 新たなプロダクトデザインを導入し、ブラッシャーをチューブに入れ、歯磨き粉のように絞って使えるようにしたものや、リップグロスのように塗れるアイシャドーなど、Glossierの製品はもともと別の化粧道具が要らず、全て手で塗れるように工夫されている。

 

5.中国でのGlossier

 メジャーチャイナ・ダッシュボードで照会したところ、売上は2018年4月の6224元から2019年4月は35万4687元と1年でおよそ50倍以上成長した。月ごとの偏りはあるが長期的には着実にローカルの需要が高まっている。

 昨年12月、小紅書(RED)で中国の歌手、張韶涵(チャン・シャオハン,Angela Chang)が自らGlossierの製品を広報した後、製品に対する需要が大幅に増加したと考えられる。

 未だ天猫(テンマオ)の中にフラッグシップストアがない状態であることから、最近の売上成長はタオバオの中のバイヤーを経由した購買代行が寄与したものとみられる。

 韓国ブランド、イニスフリーの場合、ローカルから購買代行などを通して認知度が上がった後に中国へ正式に進出した。Glossierの場合もインスタグラムを盛んに利用する中国のZ世代の間で次第に需要が高まれば、公式販売を始める可能性もあると見られる。