ダイセル、生分解性素材の多用途化が進む

週刊粧業 2020年6月22日号 5ページ

ダイセル、生分解性素材の多用途化が進む
 世界的にサステナブルな社会の実現に向けた取り組みが進む中で、化粧品の中身や外装に使用する原料・資材の見直しが進み、環境に配慮した素材への注目が高まっている。

 中でも、世界的に問題視された海洋プラスチックごみの削減に向けた対応策として、従来のプラスチックを植物由来のバイオマスプラスチックや生分解性を有するプラスチックへの置き換えを検討する動きが強まっている。

 化学品メーカーのダイセルは、そうしたサステナブルな環境配慮型製品への需要の高まりを受け、生分解性を有する「酢酸セルロース」の生産体制の強化と用途拡大の両輪で開発を進め、地球環境に配慮した企業として歩みを進めている。

 酢酸セルロースは、セルロース(植物繊維)と食酢の主成分である酢酸を原料に作られた半合成高分子であり、これを原料とした真球状の微粒子を化粧品向けに市場投入する。

 創業当初からセルロースを扱ってきた同社は1935年に酢酸セルロースのフレークスの工業化に成功している。

 同社製の酢酸セルロース微粒子は、なめらかな感触が特徴で、感触改善を目的にファンデーションなど様々な化粧品に用いられる。

 また、酢酸セルロースは、土壌や海洋中の微生物の働きによって最終的に水と二酸化炭素に分解される生分解性の機能を持つ。

 近年、洗顔料のスクラブ剤などに使用されるマイクロプラビーズによる海洋生物多様性への影響が世界的に問題視され、人にも環境にもやさしい天然由来の生分解性マイクロビーズは国内外で需要が拡大しており、同社も生産準備を進めている。

 同社は酢酸セルロースの新しい用途に向けた開発を進める中で、海洋での生分解速度を従来品の2倍近く早めた酢酸セルロースの開発にも成功した。

 分解速度を数カ月から数年単位でコントロールすることも可能で用途に適した材料を提供することを検討している。安定供給できる体制を整え、年内の販売を目指す。

セルロースの用途拡大へ
他社との共同開発も加速

 さらに今春には、酢酸セルロースの用途拡大に向け、石灰石を主原料とするサステナブル原料「LIMEX」を開発・製造販売するTBM社と共同で、プラスチックや紙の代替となる新素材「海洋生分解性 LIMEX(仮称)」の開発を開始した。

 化粧品容器の石油系プラ削減では、化粧品の使用期限である3年間の品質維持と、廃棄後に生分解性の発揮の両立が課題となっている。

 「海洋生分解性 LIMEX」は、世界中に豊富に存在する原料である石灰石を使用することにより石油系プラの削減に寄与し、かつ、海洋生分解性を有する酢酸セルロースにより環境負荷の軽減に貢献するという新たなアプローチを実現する。

 石灰石を加えることにより、これまで化粧品容器での採用ハードルとなっていた酢酸セルロースの原料価格も抑えられるという。

 また、同社は蓄積した生分解性素材の知見・ノウハウを活かし、新たな環境配慮型素材の開発も進めている。
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