資生堂、細胞接着分子がシミの発生・定着に関与することを発見

粧業日報 2022年10月28日号 5ページ

カンタンに言うと

  • メラノサイトの4D動的解析にも成功、シミの予防・根本改善へ新たな一歩
資生堂、細胞接着分子がシミの発生・定着に関与することを発見
 資生堂は、細胞同士を接着させる分子である「E-カドヘリン」がシミ部位で減少していることを発見し、「E-カドヘリン」減少環境下にあるメラノサイトの動きを3次元かつリアルタイムに解析すること(4D動的解析)に成功した。

 また、肌の「E-カドヘリン」の減少が、悪影響因子の分泌によるメラノサイトの活性化、メラニンの過剰生成、メラノサイトの停滞、メラニン取り込みといった、シミ部位特有にみられる様々な肌内部の悪化現象を引き起こす根源の一端であることを突き止めた。

 さらに、バラ科植物エキスに、「E-カドヘリン」の発現を高める効果があることを見出した。今回の研究成果の一部は、「第32回IFSCCロンドン大会2022」にて口頭発表し、「第31回日本色素細胞学会学術大会」でも発表を行う。

 今回、シミの根本的な原因を探るべく、メラノサイトとその周辺環境を深掘りした。先行研究にて、メラノサイトが正常に機能するためには、適度な細胞接着の存在が必要であることが知られていることから、細胞接着において特に重要な分子であり、皮膚組織の恒常性維持にも重要な「E-カドヘリン」に着目し、シミとの関連性について研究を進めた。

 ヒトの皮膚を用いて、正常な部位とシミのある部位を比較したところ、シミのある部位では「E-カドヘリン」が減少していることがわかった。また、「E-カドヘリン」の発現が抑制された表皮細胞由来の分泌物質をメラノサイトに作用させると、メラニン生成に関わる因子であるチロシナーゼの発現が亢進した。また、「E-カドヘリン」の発現が抑制された表皮細胞下では、メラノサイトにおけるメラニンの産生が増加した。つまり、表皮細胞の「E-カドヘリン」の減少によって表皮細胞同士の接着が弱まり、シミ因子の分泌が増加し、メラノサイトが活性化されてメラニン産生が亢進することが明らかとなった。

 続いて、「E-カドヘリン」が減少している表皮細胞の下で、メラノサイトの動きを3次元かつリアルタイムに解析することに成功し、この環境下において、メラノサイトそのものの動きが停滞することを発見した。また、「E-カドヘリン」の発現が抑制された表皮細胞にメラニン添加すると、その取り込み活性が高くなっていることもわかった。つまり、「E-カドヘリン」が減少し、メラノサイトが動かず局所的にメラニンが放出され、さらには表皮細胞が積極的にメラニンを取り込むことが、シミの発生・定着を引き起こす一因となっていると考えられる。

 さらに、ヒトの表皮細胞を用いた実験で、バラ科植物由来のエキスに「E-カドヘリン」の発現を促進する効果があることを見出した。減少した「E-カドヘリン」を正常化することで、「シミの発生・定着の予防、根本的な改善へのアプローチが期待される」(同社)という。
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