第32回 女性だけではなく男性にも Part2

【C&T2017年10月号8面にて掲載】

はじめに

 ポーラから2017年1月に発売された、医薬部外品の「リンクルショットメディカルセラム」(図1)は、女性をターゲットにしていたはずだった。


図1 POLA「リンクルショットメディカルセラム」1)

 しかし、20gで1万円を超える美容液の1割は男性が購入している。やはり男性であっても、日本初のシワ改善を訴求した商品を求めるのは、本物志向の表れかもしれない。

 スキンケア事情に関する20~40代の男性のある調査で、理想の素肌について聞くと30、40代は「ナチュラル肌」、20代は「美白」(41.7%)が最多だった。日焼け止め対策は「帽子」や「UVケア基礎化粧品」などと回答した20代の割合が全体平均より高く、美白を目指す意識の高さがうかがえた。職場に女性の社会進出が増えた結果、肌に気を配ってスキンケアをする男性は多く、女性と男性による性差は小さくなっている気さえする。

 男性コスメについてはこれまでにも述べてきたが2)、今回は男性肌、男性コスメの変遷について考えてみることとする。

男性肌3)

 男性の皮膚は女性に比べて約0.5㎜厚いといわれているが、脂肪層は女性のほうが多い。水分量も男性の方が30~40%も少ないため、女性の皮膚はみずみずしくやわらかくて弾力性があるのに対し、男性の皮膚はキメが荒くなっている。

 男性の皮膚は男性ホルモンの影響で、思春期のころから皮脂の分泌が盛んになり、女性の約2倍の皮脂量を分泌する。図2に示すように、女性は加齢とともに皮脂の分泌量が低下するが、男性はあまり減少しない。


図2 年齢による皮脂分泌量の変化3)

 そのため自然に毛孔も大きく開き、汚れが詰まりやすくなるので、いつも清潔にするスキンケアが必要になる。逆に、皮脂が多いことで乾燥しにくく、シワなどになりにくい傾向でもある。また、男性はシェービング(ひげ剃り)を行うため、肌表面の角質や皮脂膜まで必要以上に削いでしまうため、肌荒れの原因になることがある。

 男性コスメの洗顔料や化粧水は、皮脂量が多いので、概して油分の少ない処方になっている。使用感をさっぱりさせるために、熱を奪うエタノールなどアルコール類、冷感を感じるメントールやハッカ油、冷感と共に血行改善と軽い興奮やかゆみ、痛みを抑えるカンフルやクスノキなどの精油を配合している。特にひげ剃り用化粧品の使用頻度が高いので表1にその分類を示す。


表1 男性のひげ剃り用化粧品の分類3)

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島田邦男

琉球ボーテ(株) 代表取締役

1955年東京生まれ 工学博士 大分大学大学院工学研究科卒業、化粧品会社勤務を経て日油㈱を2014年退職。 日本化粧品技術者会東京支部常議員、日本油化学会関東支部副支部長、日中化粧品国際交流協会専門家委員、東京農業大学客員教授。 日油筑波研究所でグループリーダーとしてリン脂質ポリマーの評価研究を実施。 日本油化学会エディター賞受賞。経済産業省 特許出願技術動向調査委員を歴任。 主な著書に 「Nanotechnology for Producing Novel Cosmetics in Japan」((株)シーエムシー出版) 「Formulas,Ingredients and Production of Cosmetics」(Springer-Veriag GmbH) 他多数

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