【週刊粧業2024年7月29日号6面にて掲載】
GSC(グリーンサプライチェーン)の中で、国内のどの業界でもよく行われている取り組みが「廃棄」である。2024年3月に開始されたビジネス学会ICEBIT2024で筆者が研究発表した、国内化粧品大手4社のSCM分析によれば、どの企業もパッケージ戦略が積極的に行われていることがわかっている。
廃棄というと、パッケージ戦略が中心のようなイメージがあるが、すべてのSCMにおいて、廃棄を減らす取り組みが必要になっている。少し前になるが3月30日のZero Waste Day(国連が定める「廃棄物ゼロの日」)では、プラスチックだけでなく、様々な視点で廃棄物による環境破壊を食い止めようと、「Beat Waste Pollution」として掲げていた。
プラスチックの廃棄問題については、これまでも述べてきた通りだが、日本国内では廃棄や汚染対策というと、まだまだプラスチックへの対策が主流である。たしかにプラスチックの生産や廃棄の問題はまだ解決はされてない上に、その問題への解決は急務ではあるが、廃棄といってもそれだけではない。
廃棄とは、いわゆる容器や包装の廃棄だけでなく、フードロスをはじめ、農業生産において、ハーブなどの植物原料の生産上の廃棄問題もある。パーム油など過剰な開発で干ばつなどが起きることも環境負荷にもなり、汚染といえる。これまでもいってきたようなパーム油や持続可能でない原料については、減らす/代替を模索するなどが必要になる。
プラスチック以外の汚染は、産業や消費・廃棄に土壌や水などへも関係する。また、化粧品では、有害なケミカル原料の観点も見過ごしてはならない。以前も述べたが、UVケアに含まれる有害ケミカルだ。これらは海洋汚染や生物多様性の喪失につながる。
そのほか、化粧品製造工場や店舗(美容室など)周辺の土壌や河川、生物への保護も必要だ。
いまでは欧州などサステナブル先進国では、3Rから5Rが基本戦略となっている。5Rとは、ごみを減らすための5つの行動の頭文字(◆Reduce=減らす、◆Refuse=拒絶する、◆Reuse=再利用する、◆Redesign=リデザインする、◆Recycle=リサイクルする)をとった言葉を指す。
Redesignは、アップサイクルとは違い(※アップサイクルはリサイクルにあたる)、文字通り“再びデザイン”することなので、修理して長く使ったり(Repairともいう)、代替品原料へ転換することも含まれると考えらえれる。これらには、イノベーションとの絡みも欠かせない。
Refuseは、様々な環境課題や社会課題に対して持っている個人や企業の指針をもとに、それに反するものについてはしっかりNOと意思表示をすること。この分野は特に、日本人には疎いかもしれないが、プラスチックNOだったら、プラスチックペットボトルは使わない/買わない、動物原料NO/動物実験NOだったらそれらを排除する、といったことだ。何が正解なのではなく、その人や企業の指針に対して正解かどうかである。そのためには、まずどういう指針・方針なのかを明確にする必要がある。
長井美有紀
日本サステナブル化粧品振興機構 代表理事
化粧品業界に長く、早くから「環境×化粧品」を提唱。業界・企業・一般に化粧品の環境・社会課題について解く。サステナブル美容の専門家としても活躍し、主に生物多様性と産業について研究。講演や執筆、大学での講義などで幅広く活躍。
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