2010年度のオーラルケア市場は、前年比5%増の2406億円で推移した(メーカー調べ、義歯関連含む)。主要カテゴリーの内訳は、ハミガキが前年比4%増の864億円、ハブラシが1%減の518億円、液体が5%増の264億円、歯間清掃具が7%増の151億円となった。
国内人口の縮小が進む中、市場成長が継続している背景には、残存歯の本数が増加していることが要因の一つに挙げられる。1989(平成元)年に日本歯科医師会が「80歳でも歯を20本以上残そう」と8020運動を提唱し、生活者に広く呼び掛けてきた。1987(昭和62)年には75~79歳で歯が20本ある生活者は人口の約10%にも満たなかったのに対し、厚労省の直近のデータによると、2005(平成17)年には約30%にまで増加した。また、80~84歳でも20本の歯を持っている比率は約20%に達している。
1998(平成13)年には、「健康日本21」の運動も始まり、21世紀における国民の健康づくり運動が全国に広まった。よく噛んで味わいながら食事をしたり話をすることが生活の質の維持・向上に繋がるため、しっかり歯を残すことも活動の目的となっている。そこから、虫歯、歯槽膿漏や歯周病など歯疾患にならないような予防歯科や、抜かずに歯を治療する方針が広がった。
その結果、65歳以上の高齢者のうち、歯が20本以上残っている生活者の割合は、1987年には約27%だったのが、2005年には倍以上の約57%まで向上した。
もう一つの要因は生活者の口腔ケア意識の高まりで、花王の調査によれば、口内の悩みについて、以前は「虫歯」や「特になし」の回答が多くを占めていたが、2010年の調査では「特になし」が1割を切るまでに減少していることがわかった。
同時に、口腔ケア意識が高まった生活者の悩みは、口内のネバつきや、汚れ、口臭、ハグキの症状、歯のヤニなど多様化が見られるようになったという。
その悩みに対応する商品を各社が開発し、店頭で多く見られるようになったのが、高機能・高付加価値品だ。生活者も「将来のお口への投資と考え、機能性の高い、高価格帯の商品を手に取るようになった」(メーカー関係者)という。
ハミガキ市場では、ライオン、花王、サンスターの大手が高機能・高価格帯を伸ばし金額ベースで好調に推移した。さらに、知覚過敏ケアをうたう「シュミテクト」を展開するアース製薬がシェアを拡大している。
ハブラシ市場は、平均単価が下落する傾向に変化は見られない。PBブランドからも機能性のあるハブラシが発売されるようになり、今後は単価下落の傾向が若干落ち着くだろうと予測するメーカーもあるが、高価格帯と低価格帯に二極化する傾向にあり、今後は、好調な高価格帯を伸ばしつつ、中価格帯をいかに育成していくかが課題となる。
洗口液はほぼすべての生活者が使用しているハミガキやハブラシと比べ、使用率が約30%とまだ低く、使用者の獲得が見込める市場だ。既存ユーザーの使用頻度が上がり、その多くが大容量サイズを選択していることから、個数・金額ともに上昇傾向にある。
歯間清掃具は、液体市場と同様に個数・金額両面で成長した。しかし、近年は大量パックのPBや海外製品も増えており、単価が下落に転じることも考えられる。そのため、歯間清掃具に関しても、歯周病予防などの機能性を持たせたり、未使用者への啓発が必要だ。
今後のさらなる成長が期待されるオーラルケア市場では、多様化する口内の悩みに合わせ、機能をしっかりと訴求していくことがシェア拡大の鍵となる。
※2011年下期オーラルケア特集はコチラ
この記事は週刊粧業 掲載
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