この連載では、BCP構築のポイントについて、ファシリティの視点を踏まえて解説しています。
今回は、自社の事業の現状把握である事業影響度分析(BIA)がテーマです。
◆BCPと防災
これまでは、火災や地震といったリスクから被災を防ぐための対応を防災対策として拠点単位で検討されてきたと思います。
これに対しBCPは「自社の製品を重要な取引先に届ける」ことを目的としています。
原材料・資機材の調達、生産から物流に至る、製品が取引先に届くまでのすべてのプロセスに視野を向け、サプライチェーン全体の対応をまとめることがBCPの姿です。
そういった意味では、これまで取り組まれた防災活動にサプライチェーンへの対応を加えることがBCPの構築につながると考えられます。
BCP策定の流れは主に以下の通りです。今回は②についてお話しします。
①社内体制を決める
②中核事業・重要業務・目標復旧時間・重要ファシリティを決める
③リスク評価と対応を決める
④計画書にまとめる
⑤運用する
◆ビジネスの現状把握
自社の事業の現状を把握・評価し、その中でも非常時に優先して対応すべき中核事業(重要製品)・重要業務(重要工程)・重要ファシリティ(建物・建築設備・生産装置・ユーティリティなど)について考えてみて欲しいのです。これが、いわゆるビジネス影響度分析(BIA)です。
◆基礎データを収集します
まずは、生産品目と生産量の現状を把握し、生産が停止した際のおおよその損失額や他工場での代替生産・増量生産の可能性などを把握すると良いでしょう。管理項目としては以下が考えられます。
●生産品目
●生産量
●最大稼働日数
●実稼働日数
●稼働余力日数(=最大稼働日数-実稼働日数
●使用しているファシリティ
●取引先別出荷量と売上額
これらを参考に、売上(利益)・顧客の重要性・市場ニーズなど多面的に評価します。
◆中核事業(重要製品)を決定します
工場の生産品目に対して優先順位付けを行います。生産品目数が少ない場合は、商品の財務評価と顧客評価の視点で特定する場合が多いです。
◆中核事業における重要業務(重要工程)を特定します
方法としては、例えば「A製品を取引先Bに供給する」ことが重要業務であれば、受注→製造→出荷→配送→支払→決済といった業務の流れすべてに関連する業務から特定していくことがポイントになります。
◆重要ファシリティを特定します
特定した重要業務がどのファシリティを使用しているか、その実態を詳細に把握し拠点別にまとめます。
中核事業に直接関係のないファシリティにおいても、地震による倒壊・火災・爆発・有害物質の漏洩・環境汚染など、従業員の安全確保(負傷・人命・避難障害など)や周辺地域へ影響を及ぼす可能性を考慮し、すべてのファシリティの現状を把握する必要があります。
各工程で必須のサプライヤ情報もここで整理します。特に重要度の高いサプライヤについては、その企業のファシリティの現状についても一覧にまとめると良いでしょう。
◆目標とする復旧時間を決定します
特定した中核事業が被災して停止した際に復旧すべき時間(期間)を決定します。いわゆる目標復旧時間(RTO)です。これにより、どの程度まで減災対策をすればよいかの目標ができ、適切な投資配分が可能になります。各工程が停止した場合の中核事業への影響、関係者へのヒアリング、取引先のニーズなどから決めていくことになります。
以上、ビジネス影響度分析を中心にお話ししましたが、自社の事業や社会的ニーズにより変化することが考えられますので、定期的な再評価が必要となります。
次回は、BCPの戦略づくりと、それを反映させた復旧曲線図について詳述します。
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