この連載では、BCP構築のポイントについて、ファシリティの視点を踏まえて解説しています。
今回は、前号の減災対策の進め方の続きとして、具体的な減災対策の方法について解説します。
◇目標の設定「どこまで地震に強くするか」
減災対策の検討にあたっては、「どこまで地震に強くするか」といった目標を設定します。それにより方法もコストも変わるからです。工場の重要度・代替生産の可能性・リスク要因の重要業務への影響・費用対効果などを検討して決定します。
〈構造体〉の減災対策
構造体の耐震補強は、従業員の安心・安全の観点から最優先課題です。耐震目標・工期・生産業務への影響・費用対効果などを考慮し、いくつかの工法・施工方法から一番有効な方策を選択します。その施設の重要度によっては、免震構造を採用することも必要です。新潟中越沖地震や東日本大震災においても、免震構造により被災を免れたことが実証されています。
〈非構造部材〉の減災対策
天井の地震対策については、耐震クリップの採用やブレースの設置など様々な方法がありますが、その部屋の重要性や目標復旧時間を考慮し決定します。
特にパーティションは、上階のスラブと鋼材で直接固定したり、収納棚はパーティションと独立して固定するなどの対策も検討します。天井にパーティションや収納棚が固定されていると、各々の地震の水平力が天井に伝わり、損傷と落下を助長する可能性がありますので注意が必要です。
また主要な建築設備は転倒計算を行い評価します。現地調査で固定状況(ボルトの径、本数など)を確認し、図面などで機器の形状や重心をチェックします。これらの情報から、設定した耐震クラスに対して固定ボルトがせん断破壊と引き抜きを起こさないかを算定します。
〈生産装置〉の固定
生産装置は、固定した場合に装置内部の精密部品の損傷を引き起こす可能性がありますので、その場合は製造メーカーとの十分な打合せが必要です。また固定しない場合でも転倒・移動する可能性のある水平加速度を算定し、1回の揺れでどの程度装置が移動するかの評価も可能です。
◇減災対策は毎年見直しすることが重要です。
検討された減災対策は、設備の経年劣化による計画修繕や生産品目の変更など、様々な投資とあわせて、重要業務への影響度や費用対効果、事業戦略など様々な視点で評価することになります。そして、立案した減災対策を確実に実施するためには、優先順位をつけ、施設投資計画の立案と実施の管理が重要となってきます。リスク要因の洗い出しは一度実施して終わりではありません。
・立案した減災対策をいつ実施したのか
・どのようなリスクが残っているのか
・生産品目の変更で影響度に変化はないか
・新たなリスクはないか
・他の工場で同様の現象は発生しないか
など、企業内でリスクを毎年見直しすることが重要です。
そのためには、リスク管理体制を企業の組織に組み込み、リスク診断結果と減災対策をリスク管理シートとしてデータベース化した実施管理をおすすめします。
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