この連載では、BCP構築のポイントについて、ファシリティの視点を踏まえて解説しています。
今回は、「BCPの運用」です。
策定したBCPをもとに、どのような活動をしていけばよいのかを、「平常時」「非常時」「復旧時」の段階別にまとめてみました。
〈平常時:次のリスクに備える活動〉
①訓練して備える
被災後の中核事業が目標復旧時間内に再開可能かを訓練によって検証します。訓練の種類は、参集訓練や代替生産への切り替え訓練など対象者や目的によって様々です。いずれの場合も評価基準を明確にして常に改善していくことが対応力の向上につながります。
②手順書・マニュアルを見直して備える
発災後の初動、被害状況の確認、代替への切り替え手順などをあらかじめ書面にまとめ、訓練によって見直します。特に初動における連絡体制は常に最新の状態にすることが重要です。
③減災対策を実施して備える
重要ファシリティのリスク評価結果から減災対策を実施管理します。
④復旧に必要な情報を整備して備える
生産機能を目標復旧時間内に再開させるには、その前に施設の機能、特に電気設備といった建築設備の復旧が不可欠です。これらをスムーズに復旧させるには最新の図面の有無が大きく影響します。確実な図面管理を考えると、図面を電子化して一元管理する方法も考えられます。これをシステム化したものをCAFM(キャフム)と呼びます。
〈非常時:確実な初動対応活動〉
①初動(安否確認・被害状況の把握)
まずは安否確認です。特に地震や火災といった、突然発生する災害・事件・事故においては、従業員の安否確認が必須です。従業員以外のパートタイマーが多数在館する施設では、彼らの安否確認方法も事前に取り決めて訓練する必要があります。被害状況の把握は、自社の被災状況だけではなく、ライフライン(電気・上下水道・通信・ガス・電話・道路など)、サプライヤ、顧客の被災状況も確認します。
②中核事業への影響を評価
もし目標復旧時間以内に復旧の見込みがない場合は、代替手段への移行を経営者に意思決定してもらいます。代替手段が決定された際には、対応手順書に則り行動します。どのリスクがどの程度の規模で発生した場合、どのプロセスがどのように影響するのか。またその場合の対応は何があるかなどをシナリオプランニングのように事前にまとめておくと、素早い対応が可能です。
〈復旧時:代替・応急対応から通常時へ移行するための活動〉
復旧計画書に則り、被災箇所の応急・修復を行います。チェックポイントは以下の3つです。
・どこをどの順番で復旧するか(優先順位づけ)
・どの程度まで復旧するか(進捗管理)
・どのように平常時の体制に切り替えるか(意思決定)
復旧計画書には、復旧箇所の優先順位づけが明記されている必要がありますが、それらは減災対策の実施状況によって変わりますので、減災対策計画書と復旧計画書はリンクして更新される必要があります。
以上、BCPの運用のポイントについて解説しました。BCPはリスクが発生した際に十分機能することが高く問われます。そういった意味では、策定したBCPが実際に機能するかを、訓練などを通じて何度も検証して見直しを行い、徐々に習熟させる運用と体制づくりが重要と考えます。
次回は、BCPの運用の続きとして、リスク管理について解説します。
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