この連載では、BCP構築のポイントについて、ファシリティの視点を踏まえて解説しています。
今回は、「BCPの運用」の2回目として「リスク管理」について解説します。
◇自社のリスク管理
第5回「減災対策2」でも記述した通り、立案した減災対策は、事業戦略、重要業務への影響度や費用対効果など様々な視点で評価して優先順位をつけ、施設の投資計画の立案と実施の管理が重要となってきます。つまり、
①立案した減災対策を実施したか
②リスクの影響に変化はないか
③残存リスクは何か
④新たなリスクはないか
⑤他の工場で同様の事象は発生しないか
といった、減災対策の予実管理と自社内への情報共有を実施することが重要なのです。またBCPで特定した中核事業や重要業務が見直され、例えば生産品目が変更になると、おのずとリスクが発生した際の影響も大きく変化しますので、一度洗い出したリスクも毎年見直さなければなりません。
このように、企業活動の変化に追随しながら実効性の高い減災対策を行うには、中核事業の継続に脅威となるリスクの管理体制を企業の組織に組み込み、リスクの診断結果と減災対策をリスク管理シートとしてデータベース化して管理し自社の共通認識とすることが効果的です。
そのためには、事業継続管理(BCM)の活動の中で見直された項目があった場合は、その情報をすばやくリスク管理業務に受け渡す体制づくりも重要です。
◇サプライヤのリスク管理
真の事業継続を考えた場合、サプライヤのサービスが停止するリスクを洗い出し、その減災対策を実施することも重要です。その際にはサプライヤの立地評価から始める必要があります。
①自然災害(地震・津波・洪水など)によるサプライヤの被災リスク
②周辺施設の火災/爆発などによるサプライヤの被災リスク
③サプライヤから自社工場までの配送ルートと途絶リスク
サプライヤの減災対策の手順と進め方は、自社のリスクマネジメントのガイドラインを参考にしてもらうことで、各社ばらつきのない対策の実施が可能になるでしょう。
また、サプライヤが他のサプライヤと連携しているケースも多々あります。自社としてどのサプライヤまで把握するかは各社ばらつきがありますが、2次サプライヤまでを把握する場合が多いようです。自社の管理負担を考えると、重要なサプライヤについてはBCPの策定と減災対策計画の策定を要求し、彼らに対するサプライヤは彼らで管理していただくのがよいでしょう。
これら減災対策の策定と予実管理はサプライヤにとってコストアップにつながり、負担が増大することになります。自社工場の大切な協力会社として彼らに納得して実施してもらうには、日頃からリスクコミュニケーションを行い、自社のBCPを説明しそれに協力していただくことに理解を得ることが大切です。
次回は、BCPの運用の3回目として、訓練の方法と評価について解説します。
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