国際事業は昨年、中国の尖閣諸島をめぐる緊張も影響し2ケタ減となったが、まだ事業規模が大きくないため、業績への影響は軽微で済んだ。ただ今後の成長を考えれば重要なセクションであり、今後もグローバル化を推進し、成長させていきたいと考えている。
当社はモノづくりの基本理念として、製品はあくまで顧客満足を第一義に、製品の価値と価格のバランスを重視してきた。
これはロート製薬の前身にあたる山田安民薬房の創業者で祖父・安民の代から110年以上受け継いできたもので、本当に価値を感じてもらえる製品やサービスには必ずリピートがついてくるという考えのもと、どの事業にも通じる理念だと感じている。
それを今の時代に適した形でどう提供していくかについて考え、活動に取り入れている。
――具体的にどのような活動を行ってきたのでしょうか。
山田 製品に関しては自信をもって提供できることを前提に、それぞれ展開するチャネルの特性を見極めながら、その価値を伝えていく営業面の強化を図ってきた。例えば訪販事業では、対面販売で売れる仕組みづくりと対面販売できる環境づくりに取り組んできた。
これは原点回帰的な取り組みとも言える。近年は家を訪れる純粋な訪問販売は陰を潜めたが、1対1のカウンセリング販売は女性をキレイにするための最も丁寧で有効な方法であり、その価値は色あせていないと思う。
内容までは詳言できないが、顧客の「欲しい」を引き出し、自らの意志で購入してもらうことが顧客にとってより大きな満足につながるという考えに基づいた活動を取り入れている。
自分の意志で購入し、キレイになった実感を得た女性は、その体験から販売にも携わりたいという意欲が湧いてくるもの。最近はその体験を経た若い販売員が増えており、既存メンバーへのいい刺激にもなっている。
今年1月には、その若い販売員が同世代の女性にも提案しやすいスキンケアシリーズ「CRYSPEAU(クリスポゥ)」を発売した。20~30代女性の悩みに多くみられる肌トラブルのケアをコンセプトに、期待できる効果に加え、使用感と価格帯にこだわった6品を揃えた。
セルフ市場を中心に、カテゴリーごとに自分好みの商品を選ぶ女性が増えているが、対面販売の強みはシリーズトータルで使う価値を伝えていくことであり、若い世代にもその大切さを肌で感じてもらいたい。
また、もう一つの大きな取り組みとして、チームで活動する体制を整えた。販売員は独りで活動することが多く、外からの情報が入りにくい環境にあった。実績が伸び悩むと、モチベーションの低下も生じてしまう。
チームプレイへの移行により、同じ境遇にあるメンバーとのコミュニケーションの中で、情報交換やその共有化が図れるとともに、メンタル面の安定・向上にもつながっている。
――アトレージュ事業については。
山田 ドラッグストアを中心に展開する店販事業では、取扱店舗スタッフの研修・教育に力を注いでいる。アトレージュを販売するためのノウハウというより、店舗側が売りたい商品を売れるような教育を推進しており、店舗売上げを底上げしていくというスタンスに一定の評価を得ている。
アトレージュは私自身が薬剤師の知見を活かし、アトピー患者を想定して開発したブランドで、1995年1月の発売から今年で18年目を迎えた。
発売日が阪神・淡路大震災と重なったこともあり、非常に思い入れが強いブランドだが、当時は、医療従事者もアトピーに対する有効な手立てが見出せず、私自身が販売各店や顧客に対し、講演やセミナーを行い、アトピー肌に塗布する化粧品の理解を深めてきた。
厚労省がアトピーの治療指針にスキンケアを加えたのは発売から5年後で、その頃には競合製品も増え、ターゲットを敏感肌まで広げてマーケットを拡大してきた。最近はWebを活用し、リアル店舗での購買につながる方法を模索している。
――成長エンジンとなるグローバル戦略を含め今後の展望についてお聞かせください。
山田 国際事業は7~8年前より推進し、徐々にではあるが拡大してきている。マーケティングや販売スタッフのレベルアップなどに時間とコストがかかったが、香港の有名ドラッグストアではアトレージュが化粧品部門でトップクラスの売上げをあげるなど、成果として表れてきた。
特に広告・宣伝をしているわけではないため、顧客が自ら選んでリピートしていると考えられる。アジアの進出国はいずれも暖かい気候だが、保湿力の高い化粧品に対する需要は予想以上に大きく、日本で競争力のあるブランドは海外でも十分に通用すると実感している。現在深耕中のシンガポール、ヴェトナムでの成長も期待したい。
社長に就任してから20年以上になるが、遡ればアトレージュの発売にはじまり、試行錯誤しながら色々なことに取り組んできたと思う。
各事業でその成果がようやく表れてきたと言えるが、点数をつけるとしたら50点程度。まだ発展の余地はあり、今の路線を大きく変える必要はないと考えている。
ただ、「成功は失敗の母」という言葉があるように、成功体験に引きずられ、失敗していくケースもある。常に客観的な評価を与えながら、失敗は成功に、そして成功はさらなる成功につなげていけるような企業を目指していきたい。
【山田安廣社長プロフィール】
1938年(昭和13年)生まれ。1964年 大阪大学大学院薬学研究科修士課程修了 ロート製薬㈱入社、第一生産課長、広告部長、マーケティング本部長を歴任。1980年 ロート製薬㈱代表取締役専務。1988年 THE MENTHOLATUM CO.,INC.CEO兼代表取締役会長。1989~1995年 世界大衆薬協会副会長。1992年より現職。
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この記事は週刊粧業 2013年4月29日号 2ページ 掲載
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