2012年のオールインワン化粧品市場(スキンケア目的)は、富士経済の調査によると485億円となった。オールインワンジェルを主力製品に持つ既存メーカーが好調だったことや、制度品メーカーからの新規参入が市場拡大に寄与したと見られる。
さらにここ数年、オールインワン化粧品にブースターやフェースマスクなどの「+α」アイテムを追加してライン展開するメーカーも現れ、これまでオールインワン化粧品が訴求してきた「時短」や「簡略化」が形骸化してきている。オールイン化粧品はコンセプトがわかりやすいため、新規参入の基幹製品として採用されることが多いが、一方で「ステップの簡略化」を訴求しているためSKUは拡大しにくい側面がある。
しかし、オールインワン化粧品1個では企業は成長できない。そのジレンマからなかなか次の手を打ち出せないメーカーもある。今後の「オールインワン+α」の動向について、富士経済東京マーケティング本部第二事業部の山住知之課長と小松麻紀HBAグループADに話を伺った。
――オールインワンジェルに「+α」を付与する動きが表れた背景について教えてください。
山住 新たに市場に参入するうえで、「オールインワン」は非常にキャッチーで、新規顧客を取り込むのに便利な打ち出し法だった。それまで制度品メーカーが訴求してきた多ステップケアを完全否定したことが画期的であるとして生活者に受け、企業規模を拡大してきたが、次は企業をいかに存続させるかに経営戦略をシフトしなければならなくなった。
そのためには、オールインワンジェル1つで生き残れるとは考えにくい。「存続」に目を向けた場合、顧客単価や購入点数を上げるために「その他」のアイテムが必要になる。
今まで打ち出してきたコンセプトから方向性を変えていこうという傾向は確かにあり、まず矛盾ととられないアイテムが「ブースター」や「フェースマスク」だった。最近ではオールインワンジェルの大手が単品訴求の化粧水も発売して、主力のオールインワンとは別に顧客を獲得しようとする戦略も見られ、「自己否定」が進んでいる様子が垣間見られる。
小松 生活者側からすると、まずオールインワンをどのようなアイテムとして位置付けているかによっても、使い方は異なってくる。
例えば、オールインワンジェルを、乳液や仕上げのクリーム代わりに使ったりスペシャルケアとして使う場合と、うるおいなどの機能実感が足りないために美容液などと併用している場合があるが、どちらに重きを置くかによって使用するアイテム数や使い方に差が表れる。
当社の調査では、2012年のブースター美容液市場は180億円だった。外資系ブランドがうまく生活者に機能価値を浸透させることに成功したため、前年の160億円から大幅に伸長している。
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この記事はC&T 2013年9月16日号 38ページ 掲載
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