週刊粧業は2013年7月に続いて2回目となるCRM戦略特集に取り組んだ。
ここ数カ年というもの、一部の化粧品メーカーが顧客と向き合ううえでCRMを重視している気運と傾向があり、これに真剣勝負で臨む企業の進捗と実態をマーケットに発信する必要性があると判断。売上高目標や中計とは異なり、CRMという「ゴールなき道」で先頭を目指す8社の状況を追った。(記事全文はこちら)
※画像は、オルビスのコールセンターのスタッフが「シスターチーム」をつくり交流を深めている掲示板を写したもの。
注力各社に共通性を探すと
CRMはファンづくりに帰結
一連の取材を通じて聞き綴った現場の話の中で、これはもしやCRMの本質を端的に言い当てているのではないかと思える説明に触れた瞬間があった。あるメーカーのベテラン男性は、担当としてCRMに長く連れ添ってきた経験をもとに「究極の話、CRMが完璧だったら普通の販促や値引きはいらない」と明言した。
同氏は一拍置いて「もちろん、夢のような話」と述べて発言の語尾を薄めようとしたが、「究極のCRM」を語った時の目線は確信に満ちていた。
ベテランの発言が思いつきや軽はずみから出ていないことは、同氏がCRMについて「やり甲斐のある仕事だ。今後は目に見えるデータ以外にも、お客様の属性をプロとして見ていきたい」と語った言葉が裏づけている。
本特集で取材協力を得た企業・団体のうち、第三者機関の顧客満足度調査で3年連続の栄誉を飾ったオルビスの取り組み内容は注目度が高いかもしれない。
一部で、オペレーターに数字のノルマやサービス残業を課す企業もあるというコールセンター業務において、同社は「オペレーターさんたちにオルビスを好きになり、仕事にやりがいを持ってもらうことが大切」(CRM推進部 和田恵理子部長)という方針を明確にしている。
これにより、同社の電話対応部隊が「多くのファンを生むきっかけを作ってくれた」(同)という明解な成果を引き出したうえ、副産物といえそうな「潜在的なニーズを先廻りして聞き出せるような対応力を強化したい」というステップアッップ要素も引き当てるなど、オペレーターの意識改革によるCRMは社内外に好循環を生んだ。
電話接客チームの愛社精神を高めて好結果につなげたオルビスの例が偶然でないことは、日本通信販売協会(事務局=東京)の主幹研究員 柿尾正之氏の話が示している。
柿尾氏は、見逃されがちなCRMの側面に触れ「従業員を含めたステークホルダーに対するCRMは大切」としたうえで、「特に化粧品メーカーの場合、エンプロイヤーの意識が高くないと接客に影響してしまうという指摘がある」と具体性を込めて説明している。
対面接点の有効性とともに
接触方法の精度化で前進も
CRMの語意をひも解いたうえで「王道」を考えた時、そこではやはり、製品や広告宣伝とは違った発信力で生活者の目線を会社に向けてもらおうとする企業努力であるということがわかる。
アルビオンは2012年にWeb推進室を立ち上げ、まさに消費者の目線が同社に注ぐための施策で結果を出している。
2月に実施したホームページのリニューアルでは、「アルビオンのことを身近に感じて好きになってもらいたいという想い」(上村敦子ディレクター)を主眼に、プロモーションが中心だった従来の位置づけを変え「製品をどういう人がどんな思いで作っているのか知ってもらうべく、社員の顔を出したスタッフインタビューや、化粧品ができるまでを工場見学風に」積極的な刷新を図った。
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