第2次安倍内閣が発足してから約1年半が経ち、いわゆる「アベノミクス」として打ち出してきた「三本の矢」の政策効果として、内需を中心とした経済の好循環を生み、景気回復のムードが高まりつつある。化粧品・日用品業界の各上場企業の多くも、2013年度決算では収益増加となった。
一方で、今年4月からの消費増税にともなう駆け込み需要が想定以上に強く、各社通期計画では保守的な傾向も見られる。14年後半に実体経済の悪化を懸念する声も聞こえており、化粧品業界は今後も持続的に成長軌道に乗れるだろうか。
化粧品業界を代表するアナリストの一人である、みずほ証券リサーチグループ エクイティ調査部 シニアアナリストの佐藤和佳子氏に大手化粧品メーカー各社を中心に下期の展望を聞いた。(記事詳細はこちら)
駆け込み需要で出だし好調、
白斑問題は業界参入の障壁に
2014年はこれまで、4月からの消費増税にともなう駆け込み需要の影響が予想以上に大きく、化粧品メーカー各社の14年1~3月業績は、前年同期に比べて好調に推移した。
2013年を振り返れば、7月にカネボウ化粧品が展開する美白化粧品で白斑問題があったが、花王グループ(以下、花王G)は治療方法が確立していない中、皮膚科学会と協力して解明に努め、定期的に患者数を報告するなど報道にもしっかり対応しており、今やれる範囲内でベストな対応をしていると見ている。
花王Gの一連の対応を見てきた同業他社は、化粧品に万が一事故が生じた場合、「これだけの対応をしなければならない」また「花王G並みの対応可能な体制が整っているか」と思ったはずで、近年増え続けている中小企業の参入障壁になっていくのではないだろうか。
化粧品事業の質を高めることは、業界はもとより、既存の大手・中堅メーカーにとっては少なからずプラスになる。今回の問題が、化粧品事業をより高度なものへと発展するきっかけになることを願っている。
駆け込み需要の反動減について、資生堂とコーセーは、今年6月頃まで残ると予想している。後述するが、前期での両社の取り組みに違いがあるため、反動減が同じ月であるとは考えにくい。資生堂が厳しく見ているのか、もしくはコーセーが楽観的に見ているのか。14年3月期2Qで明らかになるはずだ。
一方、高価格帯ブランドが揃うポーラ・オルビスホールディングス(以下、ポーラ・オルビスHD)は、反動減が14年12月期3Qまで続くと予想し、他社に比べて長期的に見ている。
資生堂の国内化粧品事業が14年4月の月次で8%のプラス成長となったが、駆け込み需要が想定以上に強かったため、店頭在庫が減ったことにより、出荷に反映されたためだ。日本全体では5月以降、徐々に消費者の購買活動が戻ってきたとの報道もあるが、出荷ベースでは、5~6月が前年同月に比べて落ちているだろう。
ただし資生堂の場合、昨年7月以降、流通在庫の減少に取り組んできた。同時期より売上げを落としたカネボウ化粧品の分を積極的に獲りにいった印象は薄い。一方のコーセーは、7月以降も新製品を積極的に展開している印象が強かった。
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この記事は週刊粧業 掲載
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