「不況に強い」と言われてきた化粧品業界だが、長引く消費低迷や少子高齢化の影響など様々な外的要因が重なり、近年は苦戦が続いている。それは化粧品メーカーのみならず、容器や原料といったモノづくりの基盤を支える企業にも影響が及んでいる。
このような中、市場シェアの獲得を目指し、容器メーカーの椿化工は、今年1月に販売会社である「ツバキスタイル」を設立した。50年以上、容器メーカーとして培ってきたノウハウや、数百社に及ぶ顧客とのつながり、業界の最先端を掴む情報収集力を武器に変え、商社機能の拡充による提案製品のラインナップの幅を広げることで、顧客サービスを追求した「新時代の企業」として価値を見出していく。
一貫生産による高い信頼性獲得
設備や容器で環境配慮を推進
椿化工は、スキンケアやトイレタリーを主としたプラスチック容器を提案してきたが、新会社のツバキスタイルではメークやジャー容器など他方面にも提案の幅を広げ、容器のトータルアドバイザーとしての地位の確立を図っている。同時に、新たな市場開拓のためアプリケーター事業も本格化させる。
これまで培ってきたプラスチック容器製造のノウハウを活用し、技術を駆使した容器を直接小売市場に向けてアプローチしていく。社員は最新のトレンドを捉えるべく、平均年齢34歳の若いメンバーで構成し、新しいアイデアを積極的に取り入れ、経験と実績がある競合他社と向き合い、過去16年間増収増益の実績を持つ提案力をもって、業界の先駆者として新風を巻き起こしていくという。
ツバキスタイルは、親会社の本社工場がメーカーとしての確固たる基盤を持っているため、提案できる容器のバリエーションは豊富だ。
現在、二軸延伸ブロー成型機が18台、ダイレクトブロー成型機が6台、インクジェクション成型機が2台稼働しているほか、印刷機、ホットスタンプ機、オートラベラーやシュリンクトンネルも多数保有しており、ボトル成型から加飾仕上げまで一貫して手掛けられる生産体制を整えている。さらに、流通にも便利な東京近郊の埼玉南部に工場を構えているため、クライアントが直接工場に来て、依頼した製品が完成するまでの工程をすべて確認できることも自社一貫生産ならではの強みとしている。
工場内の設備に関しても充実化を進めている。一般的に、製造工場の課題と言われている省エネ化について、同社はいち早く措置を取った。工場や倉庫の屋根全面に太陽光パネルを設置し、照明もすべてLEDへ切り替えるなどして、環境配慮に努めている。
容器素材にはバイオプラスチックを積極的に使用し、石油系資源の使用量を削減している。バイオPET・PEは、原料の3~9割を占めるエチレングリコールを、石油由来のものからサトウキビ由来のバイオエタノールでつくられたものに置き換えることで、石油使用量の削減を実現した。
サトウキビは、森林を伐採せず他の食料とも競合しないうえ、大気中のCO2を吸収しながら成長する。これをプラスチックの原料とすることで、従来の石油系プラスチックと比べ、製造から廃棄までの過程においてCO2排出量を抑制するとともに、限りある石油資源の使用量削減が可能になった。
同社では現在、設備、容器双方でエコに貢献できる企業として、アピールを強化している。
製販一体型の組織体制構築し
「提案力」と「商品力」を強化
同社では提案力も強みとしている。
容器メーカーとして培ってきたプラスチック容器に関する知識やノウハウだけでなく、予算に合わせた製品選びまで的確なアドバイスを行うことができるという。
これは、同社の営業部隊と現場の距離感が近く、「製販一体」の組織体制に起因する。机上論ではわからないことやリスクなどを事前に顧客に丁寧に伝えることで、より安心で、より良い製品やサービスの提供に注力しているのも、顧客から高い信頼を得ているゆえんという。
最近は、提案力の強化のため3Dプリンターを導入した。同社は容器メーカーではいち早く3Dプリンターを導入し、簡単なラフスケッチだけで容器をつくれるようにした。これまで、パソコンの画面上でしか見ることができなかったモデルを実際に手に取って確認することができるため、完成した時のイメージがつきやすく、企画開発やデザイン担当者にとっては社内や販売店に対し説明しやすくなる。
「最大の武器」(藤村社長)とするのは、商品力だ。常に新商品を創出することで、市場に対して新しい価値やアイデアの提案を図っている。
最近では、容器のみならず、ディスペンサーやポンプフォーマーなど大手ポンプメーカーとタイアップしたオリジナル製品の開発にも取り組んでいる。
新型容器では、9シリーズを発表したほか、ツバキスタイルブランド第一弾ともいえるオリジナルポンプを発表した。選択肢の少なかった国内ポンプにリキッドタイプの1cc、3cc、泡ポンプの3種を展開している。デザインにも徹底的にこだわり、長めの流線型ノズルヘッドにシャープ感を持たせた。同時に押しやすさにもこだわっており、デザイン性豊かで、使いやすさをも追求したポンプを国内生産で完成させることができたという。
商品数が多いため、今年のカタログは追加冊子として配布し、展示会場でも新型のポンプを紹介する。
「ツバキスタイル初のポンプは、国内生産に裏付けられた安心と安定のクオリティに加え、デザイン性の豊かさに特長がある。ブースでポンプを手に取って、そのクオリティの高さを実感してほしい」(藤村社長)
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この記事は週刊粧業 掲載
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