資生堂、肌内部で起きる「老化の伝播」を解明

粧業日報 2018年11月29日号 3ページ

資生堂、肌内部で起きる「老化の伝播」を解明
 資生堂は、国際医療福祉大学医学部形成外科学 松﨑恭一主任教授と生理学研究所との共同研究により、加齢に伴い肌内部に形成される老化した細胞が、周囲の細胞の機能を低下させ、肌の加齢変化を引き起こすことを解明した。

 また、この「老化の伝播」を真皮の幹細胞が抑制することや、加齢で著しく減少する幹細胞が高齢者の肌でも皮脂腺周囲に豊富に存在することを発見した。

 さらに、アイリス抽出液が、幹細胞を誘引することを見出した。

 幹細胞を活用することで、肌の若返りが期待できる同研究成果を、今後の製品開発へ応用していく。なお、同研究成果の一部は化粧品技術者の世界大会(IFSCC ミュンヘン大会2018)で口頭発表し、最優秀賞を受賞している。

 加齢により発生するシワやたるみは、肌の真皮層の状態が加齢で悪化することが大きな要因だが、その詳細なメカニズムは十分にわかっていなかった。

 今回の共同研究では、電子顕微鏡解析技術を新たに開発し、細胞の微細な形状までも観察することに成功した。この技術で真皮を解析したところ、若齢者の真皮の細胞は多数の突起を伸ばしているのに対し、高齢者の真皮中には、突起を失い、形状の変化した細胞(老化細胞)が観察された。

 細胞を用いた実験の結果、老化細胞は因子(老化因子)を分泌することで、周囲の細胞に悪影響を及ぼすことが確認された。つまり、こうした「老化の伝播」により、真皮の加齢変化が起きることが明らかになった。

 同社では、「老化の伝播」をとめる方法を探索したところ、真皮の幹細胞が、老化細胞の老化因子の産生を抑制することを見出した。真皮の幹細胞は、加齢に伴い著しく減少するが、高齢者の真皮でも皮脂腺の周囲には、真皮の幹細胞が豊富に存在した。このように皮脂腺は、その周囲に幹細胞を蓄える「リザーバー」として機能することが明らかになった。

 この一連の発見から、老化の進んだ真皮中に、リザーバーから幹細胞を誘引することで、老化の伝播をとめ、真皮を良好な状態にすることが可能と考え、さらに幹細胞を用いた研究を進めたところ、アイリスの抽出液に幹細胞を誘引する働きを見出した。
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