資生堂、肌の弾力と毛細血管の関係性を解明

粧業日報 2019年10月24日号 4ページ

カンタンに言うと

  • 酵母細胞抽出液がコラーゲン産生を助けることを発見
資生堂、肌の弾力と毛細血管の関係性を解明
 資生堂は、肌内部の血管を3次元で観察する独自技術を用いて、肌の弾力に毛細血管が関与していることを初めて解明した。

 また、酵母細胞抽出液が毛細血管を健康に保ち、肌の弾力の維持に重要なコラーゲンの産生を促す効果を持つことを見出した。

 今後、この研究成果を活用し、シワやたるみなど肌の弾力の低下によって生じる肌悩みを防ぎ、ハリのある肌へ導くスキンケア製品の開発を進めていく。

 なお、研究成果の一部は「国際化粧品技術者会連盟(IFSCC)ミラノ中間大会2019」で口頭発表し、最優秀賞を受賞している。

 研究では、同社独自の血管3次元可視化技術を用いて、肌の弾力と毛細血管の状態との関係性を調べた結果、20代の肌のように高い弾力を示す場所では、毛細血管が太く、高密度で存在していることわかった。

 また、毛細血管の周囲にコラーゲンが産生されることも観察したことから、毛細血管が肌の弾力の維持に関与している可能性が示唆された。

 毛細血管中には、毛細血管が良好な状態を保つために重要な因子であるインテグリンα5が存在し、この因子の発現が肌内部でのコラーゲン産生に影響していると考えられている。

 今回同社が行った研究では、加齢に伴い毛細血管中のインテグリンα5の発現量が減少し、それに伴い肌弾力も低下することが明らかになった。この結果は、毛細血管中のインテグリンα5の発現の維持が肌の弾力に重要であることを示唆しているという。

 そこで、インテグリンα5を増加させる薬剤を探索した結果、サッカロミケス属(Saccharomyces)の酵母から特殊な方法で抽出した酵母細胞抽出液にその効果があることを確認した。

 このことから、酵母細胞抽出液は加齢によって減少するインテグリンα5の発現を増やしてコラーゲン産生を促し、ハリのある肌を生み出す効果がある可能性が見出された。

 同社はこれまでにも毛細血管と肌の関係性に着目した研究に取り組み、加齢や紫外線によって毛細血管がダメージを受けて減少することが皮膚老化の根本的な原因の1つであることなどを報告してきたが、従来の方法だけでは、肌内部の毛細血管の複雑なネットワーク構造を十分に理解することはできなかった。

 そこで同社では2018年、組織透明化という手法を用いて、肌内部の毛細血管を広い視野で3次元的に可視化する独自技術を開発した。

 この技術を用いて、毛細血管がまるで足場として肌を支えるように非常に密なネットワーク構造を形成していることを発見し、今回の肌の弾力と毛細血管の関係性の解明につなげた。
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