●高級ブランドが本腰を入れている化粧品マーケット
2020年の春が近づき、新商品のPRを本格化しているグッチとエルメスは、これまでの⾃社ブランドイメージをキープしたデザインの化粧品を公開し、注目を浴びている。
グッチビューティーは2014年に販売を開始したが、当初はあまり注目されなかった。グッチがアレッサンドロ・ミケーレをクリエイティブディレクターとして迎えた後、2018年秋から商品PRが本格化した。
エルメスは2020年、初めて自社ブランドの⼝紅を発売する予定で、本格的な化粧品市場への進出を目指している。アパレルやバックが⼈気の⼀流⾼級ブランドが化粧品業界へ進出し、これまで成功したブランドには、Chanel、Dior、YSL等があり、GivenchyやBurberryも化粧品のラインアップがある。
●高級ブランドにとって化粧品マーケットへの参入が容易である理由
①新規消費者の獲得が容易
高級ブランドのメイン商品であるアパレルやバッグは、販売価格が高いため、購買ハードルが高くなっている。その⼀流ブランドが、化粧品を発売すると、「一度は持ってみたい! 使ってみたい!」という気持ちから、実際の購入に繋がりやすい。更に、消費者は、これまで購入できなかったブランド商品を購⼊することで、優越感に浸ることができ、購入者に更なる満⾜感を与えられる。
高級ブランドの商品を購入した方がコスパが良いという認識もある。
②ブランドロイヤリティーが生まれやすい
高級ブランドの化粧品は、これまでの自社ブランドのイメージを維持したり、派手なパッケージを採用したりと、完成度の高いデザインになっており、多くの消費者の購買欲を刺激している。
例えば、グッチを好み、何点かを持っている消費者は、同ブランドの化粧品を購⼊することが考えられ、更なるブランドロイヤリティーの向上に繋がりやすい。
価格の安い化粧品で高級ブランドに初めて接した消費者も、魅力的な商品のパッケージや品質の高さを実感することで、そのブランドに対するロイヤリティーが生まれ、化粧品を入口に他の商品ラインアップ(アパレル、バック、雑貨等)の購入にもつながりやすい。
③新たな収益源
高級ブランドにとって化粧品は、特性上、マージン率も高く、アパレルやその他の商品よりも、販売量をはるかに多く見込める。例えラインアップが失敗したとしても企業へのダメージが少ないのも大きなメリットである。バッグの場合、長い時間をかけ商品の企画と生産をするため、多額の費用がかかる。
ところが、化粧品は比較的商品の開発コストが安いので、販売面において予想を下回っても、ダメージが少なくて済む。高級ブランドにとって化粧品は消費者の趣味趣向を容易にテストできる魅力的な市場でもある。
●高級ブランドにとって魅力的な中国市場
グッチビューティーの圧倒的な強さ
グッチビューティーは、アリババのタオバオプラットフォーム上でなんと2019年3月以降の売上が95%以上も上がった。これは、CtoCマーケットであるタオバオ上で圧倒的な売上を誇るグッチビューティーが、既存の高級ブランド⼒を化粧品マーケットにおいても、十分に発揮することに成功したことを意味している。
タオバオでのグッチビューティーの売上が急成⻑する中、グッチは、2019年11月、上海で口紅のローンチイベントを開き、北京にコンセプトストアをオープンし、本格的な中国進出を果たした。現在、グッチ公式HPではオンラインで⼝紅商品が購⼊できる。Weiboのオフィシャルアカウントに口紅関連の投稿を続けるなど、積極的なPR活動を続けている。
一方、エルメスは2020年3月に、24色の口紅ラインアップをグローバル市場向けに発売する。中国での発売日は未定ではあるものの、既に商品情報が中国で公開されており、消費者の期待も高まっていることから、好調なスタートを切ることが期待されている。
●中国での高級ブランドの化粧品マーケットシェアは今後も拡大傾向
既にTモールに公式ストアをオープンし、中国進出に積極的な姿勢を見せているブランドにはYSL、Givenchyがあり、高級ブランドが化粧品を発売すると、ソーシャルメディア上に大きく取り上げられ、拡散されやすく、話題になりやすい。
既にロイヤリティーの高いユーザーを抱えた高級ブランドは、高いリピート率が期待できることから、勝ちやすいビジネスであることがわかっているため、化粧品マーケットに魅⼒を感じているのだ。
中国における⾼級ブランドの積極的な市場開拓は今後も続き、販売量の増加が期待されるため、これまで安定的な販売量を確保してきた⽼舗化粧品メーカーは、高級ブランドの動向を無視できなくなるであろう。
【メジャーチャイナ】(記事提供元)
中国EC・SNSのビッグデータを収集し、ビジネスインサイトを提供するデータ分析会社。中国で取引される6800万個のコスメ商品の売り上げ/価格/効能/原料等の属性別トレンド分析データ、レポートを提供。Unilever,AMOREPACIFIC,LG健康生活 等のグローバルブランド、証券アナリスト等が本社のサービスを利用中。
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