ダイセル、1,3₋BGの世界的な需要拡大で増産体制へ

週刊粧業 2020年5月25日号 6ページ

ダイセル、1,3₋BGの世界的な需要拡大で増産体制へ
 化粧品の保湿基剤や植物などの抽出剤として用いられる1,3₋BG(1,3₋ブチレングリコール、1,3₋ブタンジオール)は、消費者のオーガニック・ナチュラル志向の高まりやサステナブルな社会の実現に向けた新たな潮流への対応が進む。

 化粧品用途の保湿基剤は、グリセリンが最も知られているが、1990年代頃より1,3₋BGが化粧水やシートマスクをはじめ様々な化粧品に広く用いられるようになっている。

 1,3₋BGは、グリセリンに比べ、べたつきが少なく、さらっとした使用感に特徴があり、感触改善も目的に使用されることが多いが、90年代以降、抗菌性をもつ特徴も注目され、需要が拡大している。

 それには歴史的な背景もある。

 化粧品は2001年より容器やパッケージへの全成分表示が義務化されたが、それ以前は肌トラブルが生じる恐れのある成分を「表示指定成分」としてリスト化し、製品への記載を義務づける制度を設けていた。リストには防腐剤なども含まれていた。安全性の高い保湿剤の1,3₋BGはリストから除外されており、保湿や防腐を目的に用いられるようになった。

完全無臭グレードでシェア拡大原料のオーガニック化に布石も

 化学品メーカーのダイセルは、1,3₋BGの需要が拡大する中、顧客の要望に応える形で改良を進め、90年代後半に1,3₋BGを無臭化することに成功した。

 同社は「発売当時、日本市場で無添加・無香料がトレンドになっていたことも後押しした」と振り返りながら、こう続けた。

 「競合他社にも低臭タイプのものは存在するが、無臭というレベルにまで達していない。完全無臭グレードであることが品質保証の担保となり、発売以来、取引先から評価をいただいている」

 無添加・無香料のトレンドはすっかり市場に定着し、東アジアを中心に海外でも需要が伸びている。

 同社も販路を海外に広げ、メーカー別1,3BG生産量は世界でシェア2位、日本と韓国での販売数量はトップを走る。今後も世界での需要拡大を見据え、20年秋を目途に1,3₋BGの製造を国内2拠点に広げ、増産・安定供給体制を構築する。

 また同社は、新たな化粧品ニーズへの対応策として、17年12月よりバイオベンチャーのGenomatica社(米国、ジェノマティカ社)と提携し、植物由来の1,3₋BG「Brontide(ブロンタイド)」の国内供給を開始している。

 「Brontide」は、植物を素材に発酵技術で製造する天然由来の1,3₋BGで、昨今話題のサステナブル原料の一つ。国内販売を開始してまだ2年だが、生産量は既に1,3₋BG市場全体の約2%を占める。今後の需要性を鑑みて、昨年末にはジェノマティカ社とアジア太平洋地域での独占販売契約を締結した。

 「オーガニック化粧品市場はアジアを中心に世界的に成長しており、近年は天然植物由来の原料に対する需要が高まっている。新製品はもとより、既存商品でも石油系原料から天然原料への置き換えが進んでいる。植物由来の1,3₋BGを通してブランドイメージの向上など製品の付加価値を高めることに寄与していきたい」(同社)

 昨年はSDGsやESGが大きく注目を集め、企業の取り組みとして、原料・資材の調達からサステナビリティの気運が高まっており、天然由来の1,3₋BGの提案も強化していく考えだ。
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